【作品解説】マルセル・デュシャン「春の青年と少女」

春の青年と少女 / Young Man and Girl in Spring

妹スザンヌへの結婚祝いの作品


マルセル・デュシャン「春の青年と少女」(1911年)
マルセル・デュシャン「春の青年と少女」(1911年)

概要


作者 マルセル・デュシャン
制作年 1911年
メディウム 油彩、キャンバス
サイズ 50.2 x 65.7 cm
コレクション プライベートコレクション
スザンヌ・デュシャン
スザンヌ・デュシャン

《春の青年と少女》は1911年にマルセル・デュシャンによって制作された油彩作品。その年パリの薬剤師シャルル・デマールに嫁いだ妹スザンヌへの結婚祝いの作品である。

 

この作品はデュシャン初期の重要作で、のちの《大ガラス》であつかわれるおもなテーマはここにすでに予告されており、デュシャンの人生の秘められた心理と思想を紐解く鍵になるといわれている。

 

子どものとき、二人の兄はすでに家から離れたルーアンの学校に通っていたので、デュシャンは妹のスザンナと過ごす時間が多かったという。二人は生まれついての相棒で新しいゲームや遊びを思いつくのが好きな兄さんとなら、スザンヌはなんでも喜んで一緒にしたがったという。

 

マルセルがスザンヌを手押し車に乗せて押している図がある。画版を構えたマルセルが妹に、人形のスカートをたくしあげて「素っ裸」のところを描かせてほしいと頼み、そんなことすると「火傷するわよ」というスザンヌが戒める。

 

 

美術史家のアルトゥーロ・シュワルツは、フロイト、ユングなどさまざまなが学術的権威を引き合いに出しながら、デュシャンが妹に対して近親相姦的な情欲をいだいていたこと、そしてこの情欲を無意識に抑えつけて、さらに昇華させていたと示しています。デュシャン自身もまた「本人もまったく気づかぬ力と衝動」の影響下にあったと記している。


 

マルセル・デュシャンに戻る

 

■参考文献

・「マルセル・デュシャン」カルヴィン・トムキンズ