ファルマコンの蟲惑
2004年発売山本タカト第三画集
本の内容
男か女か分からないだまし絵要素が充実
「ファルマコンの蟲惑」は山本タカトの第三作品集。
2004年にエディション・トレヴィルより発行(発売:河出書房)。また2007年に復刻版が同社より発行されている。
これまでの画集に比べると少女画も増えており、掲載作品全体の4〜5割ぐらいを占めている。ただ一見すると少女に見える人物が、よくよく見ると男性画ではないかと思われる作品が多い。
前半に登場する少女は、首から上こそ女性顔だが、胸が小さいというよりも華奢な青年の身体で、周囲に女性用下着こそ置かれているものの、股が閉じていたり、花や木の枝で隠されているため女性器なのか男性器が付いているのかははっきり分からない。男性器を太ももで閉じて股の下に隠している状態のようにも思える。
中盤の「孵化」あたりから、明らかに女性とは思えない身体の人物画中心の作品になり、ページをめくるごとに髪はショートカットから男性的な髪型となり、はっきりと男性画に変化する。何か女性を装っていた男性が、正体を露わにしたようである。
基本的には中盤から終わりまで青年画が中心になるが、すべて男性画というわけでなく、ところどころはっきりと少女画である作品も現れる。たとえば「メランコリア」の少女は、女性器もはっきりか描かれおり、女性的な乳房である。
このような流れからすると、一時的に男性化願望のあった思春期女性(ジャンヌ・ダルク症候群)が、成熟してまた女性化したようにも思える。
なお、本書に収録されている作品、特に前半部分の多くが、だましえ絵的な要素があり、背景をよく見ると、骸骨や性器なナイフなどさまざまなモチーフが隠れていることが分かり、面白い。