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【作品解説】ポール・ゴーギャン「二人のタヒチの女性」

二人のタヒチの女性 / Two Tahitian Women

身体は前を向くが視線は逸れる無垢な女性


ポール・ゴーギャン「二人のタヒチの女性」(1899年)
ポール・ゴーギャン「二人のタヒチの女性」(1899年)

概要


作者 ポール・ゴーギャン
制作年 1899年
メディウム 油彩、キャンバス
サイズ 94 cm × 72 cm
コレクション メトロポリタン美術館

《二人のタヒチの女性》は、1899年にポール・ゴーギャンによって制作された油彩作品。タヒチ島在住でマンゴーと花を手に持つトップレスの二人の女性を描いたものである。94 cm × 72 cm。メトロポリタン美術館が所蔵している。

 

ゴーギャンが名誉毀損を受けパリに住みづらくなり、タヒチへ移住したころに制作した作品で、当時ゴーギャンはタヒチの原住民女性の穏やかな性格と美しさに魅了されていた。ゴーギャンは「タヒチのイブ」として彼女たちを感情的に生き生きと表現し、また彫刻的なポーズで彼女たちを描いた。

 

タヒチ島は無垢なパラダイスとして表現されるが、描かれた二人の女性は、マネの「草上の草食」や「オリンピア」とよく似た描き方をしている。女性たちは鑑賞者の方へ堂々と裸の身体を向けている。女性の胸を花や果物と一緒に描いており、明らかに鑑賞者を誘惑しているのがわかる。

 

しかし、彼女たちの視線はよくみると少しずれている。左の女性の首から下は強い光で照らされるが、身体に比べて表情は薄暗い。

 

「名状しがたい彼女たちの素朴さ」、同時に「恥じらいなく裸で動き回ることができる」とゴーギャンはタヒチの女性たちについて話している。

 

なお描かれている女性たちはほかのゴーギャンの作品「タヒチのパストラル」(1898年)や「フルーツ・ハーベスト」(1899年)にも現れる。

 

この作品は、2011年4月、ワシントンDCのナショナル・ギャラリー・オブ・アーツに貸出展示をしていたさいに、スーザン・バーンズという名前の女性から絵画のプラスチックのカバーを叩かれた。ただ、プレキシガラスの保護のため作品が破損することはなかった。女性は美術館の警備員にすぐに拘束された。