慈善週間 / Une semaine de bonté
3番目のコラージュ・シュルレアリスム小説
概要
作者 | マックス・エルンスト |
出版社 | ジャンヌ・ブッチャー |
制作年 | 1934年4月から12月 |
シリーズ | 5 |
出版場所 | パリ |
エディション | 816 |
『慈善週間(Une semaine de bonté)』は、1934年に出版されたマックス・エルンストの3番目のコラージュ小説、アーティストブック。
ヴィクトリア朝時代の百科事典や小説の挿絵を切り抜いてコラージュしたもので、古典的な夢とエロティックな空想の182枚の作品で構成されている。
応接室とベッドの部屋では、男爵はライオンの頭を手に持ち、パーラーの床は水に変わり、ある人は水面を歩くことができ、ある人は溺れる。
エルンストの最初期のコミック『繰り返し』と『不滅の不幸』は、作家がパリに移住した年の1922年の作品である。これらは詩人ポール・エリュアールとの共同作業で制作された。
エルンストはその後、コミックを題材にした絵画を数多く制作し、さらにコミックブックも制作した。
『慈善週間』以前の重要な作品は『百頭女』(1929年)と『カルメル修道会連結ろう押した少女の夢』(1930年)である。
構成
巻 | 曜日 | 要素 | 例 |
一巻 (紫) | 日 | 泥 | ベルフォールのライオン |
二巻(緑) | 月 | 水 | 水 |
三巻(赤) |
火 | 火 | ドラゴン |
四巻(青) | 水 | 血 | オイディプス |
五巻(黄) | 木、金、土 | 黒、視力、 |
オンドリ イースター島 視界の内側 カギ |
この作品は当初5巻で出版されたが、実際には日曜日から始まる曜日の名前をつけた7つのセクションに分かれている。最初の4巻はそれぞれ1日をカバーし、最後の巻は木曜日、金曜日、土曜日の3巻をカバーしている。
エルンストは当初、「各書籍を曜日と関連付けた7巻で出版するつもりだった」と話している。
しかし、最初の4冊の出版は、期待されたほどの成功を収めなかった。そこで、残りの3冊の「日」をまとめて、最終の5冊目にしたのである。
7つのセクションはそれぞれ1つの要素に関連付けられ、その要素の例と碑文が提供される。小説の全体的な構成は次の通りである。
7つのセクションのほとんどには、その中のイメージを統一する明確なテーマがある。日曜日では「泥」がテーマとなっており、エルンストは「ベルフォールのライオン」を例に挙げ、ライオンの頭を持つキャラクターが多数登場する。
「月曜日」のエレメントは「水」で、すべての映像に、自然の中にある水、あるいは寝室やダイニングルームなどの中に流れている水が描かれている。登場人物の中には水の上を歩くことができる者もいれば、溺れる者もいる。
火曜日は「火」を連想させるため、ドラゴンや幻のトカゲが多く描かれている。
最後の「水曜日」は、鳥人が多く描かれている。
木曜日の要素である「黒」は、2つの例がある。最初の例である「雄鶏の笑い」は、鳥人のイメージが多く描かれている。2つ目の例であるイースター島は、モアイの頭を持つ人物を描いた画像で説明されている。
本全体の中で最も抽象的な部分である「金曜日」には、カテゴライズされることに抵抗がある様々なイメージが含まれている。人骨や植物のコラージュもあり、そのひとつは『慈善週間』全5巻を収めるはずだった厚紙のスリップケースに使用された。
最後のセクションである土曜日には、10枚のイメージがある。与えられた要素は「歌の鍵」であり、イメージはまたもや分類不能である。このセクションは、そしてこの本とともに、倒れている女性のいくつかのイメージで締めくくられている。
『慈善週間』の完全な解釈はこれまで発表されていない。本書は前作同様、「抑圧されてきたものを示唆するために、原作の視覚的意味を外すことにより、性的なもの、反教理主義、暴力という再発するテーマを投影した」とされている。
歴史
『慈善週間』は、1933年にイタリアを訪れた際、わずか3週間で完成させた。
コラージュの原画は、1936年3月、ポール・エリュアールの発案でにマドリッドの近代美術館で初めて展示されたが、一部のイメージは下品とみなされた。
エルンストは、1883年のジュール・マリーの小説『パリの呪い』の挿絵や、ミラノで購入したギュスターヴ・ドレの作品集など、いくつかの資料が判明している。
完成した小説は、1934年にパリで5冊の小冊子としてそれぞれ816部限定で出版された。
1976年にアメリカのドーバー出版から、英語訳と英語序文を含む208ページの合本として再版され、より一般に入手しやすくなった。
マックス・エルンストが終生保管していたコラージュの原画は、1936年3月、マドリッドの国立近代美術館で一度だけ全貌が公開されたことがあり、それ以降は2008年まで公開されたことはなかった。
2008年以降、ブリュールのマックス・エルンスト美術館、ハンブルク美術館、パリのオルセー美術館などで公開展示されている。
■参考文献
・https://en.wikipedia.org/wiki/Une_semaine_de_bont%C3%A9、2021年12月17日アクセス