【ヴァンダリズム】ウクライナの美術館がロシアの侵攻で全焼

ウクライナの美術館がロシアの侵攻で全焼

ウクライナ素朴派の作品が消滅


ウクライナ外務省によれば、キエフ州イヴァンキフ市の郷土史博物館がロシアの侵攻により焼失したという。小さな美術館で、ウクライナの民俗画家マリア・プリマチェンコの作品25点を所蔵していたが、すべて焼失したという。

 

TwitterやTelegramで流れている動画には、美術館の建物とされるものが燃えている様子が映っている。

 

農家に生まれ、1987年に88歳で亡くなったプリマチェンコは、生涯をイヴァンキフ近郊の村で過ごした。

 

彼女は地元の神話や民間伝承を題材に、夢の中に出てくるような空想上の獣を描いた作品で知られるアウトサイダー・アート、ナイーブ・アート(素朴派)である。彼女の作品はパブロ・ピカソを魅了していた。

 

4年間学校に通った後、ポリオを患い、身体に障害が残り、そのことが彼女の人生と芸術に影響を与えた。彼女は晩年に自身の初めての芸術体験に対して次のように話している。

 

「幼い頃、ガチョウの群れの世話をしていたことがある。ガチョウたちと野生の花が点在する野原を横切り、川のほとりの砂浜に行くと、私は砂の上に棒で現実と空想の花を描き始めていた」

 

その後、自宅の壁を天然顔料で塗りはじめ、それ以来、絵を描くことをやめたことはなかったという。

 

マリア・プリマチェンコ《双頭鶏》,1977年
マリア・プリマチェンコ《双頭鶏》,1977年
マリア・プリマチェンコ(1936年撮影)
マリア・プリマチェンコ(1936年撮影)

1966年には、ウクライナで最も高い文化的名誉であるシェフチェンコ賞を受賞した。ユネスコは、彼女の民芸品分野での貢献を称え、2009年を「マリア・プリマチェンコの年」と定めた。

 

プリマチェンコの作品は、キエフにあるウクライナ国立応用民芸博物館に650点ほどが収蔵されている。

 

イヴァンキフ市は、2月24日にロシアに占領されたチェルノブイリとキエフの間に位置し、ロシアの侵攻の要衝にある。2月25日、ウクライナ軍は首都に向かうロシア軍を阻止するため、同市の橋を破壊した。

 

トゥーンペア近郊のヴィショロド歴史文化保護区のヴラダ・リョフチェンコ館長は、この博物館の破壊について「修復不可能」と話している。