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【作品解説】エゴン・シーレ「家族」

家族/ The Family

スペイン風邪で死ぬ直前のシーレ最後の絵画


エゴン・シーレ《家族》,1918年
エゴン・シーレ《家族》,1918年

概要


作者 エゴン・シーレ
制作年 1918年10月31日
サイズ 152.5×162.5 cm
メディウム キャンバスに油彩
所蔵者 ベルヴェデーレ・ギャラリー

《家族》は、1918年10月31日にエゴン・シーレがスペイン風邪で亡くなる直前に描いた最後の油絵。未完作品。作品は152.5cm×162.5cmで、ウィーンのベルヴェデーレ・ギャラリーが所蔵している。

 

 

エディス・シーレは、1918年10月28日、妊娠6ヶ月でスペイン風邪にかかり、子供は助からず、シーレ自身も3日後に同じ病気で亡くなった

 

この絵は当初、『しゃがむカップル』と題され、画家と女性が裸で膝を立ててしゃがんでいる姿が描かれたものである。女性の肌は明るいピンク色だが、男性はまだ暗い背景の中で暗いブロンズ色をしている。

 

人物はしっかりとしたピラミッド型の構図で配置され、床に座った女性は両腕を脇に置いて左側の空間を見つめている。

 

男性は、ベッドかソファの上で少し背伸びをして、左腕を曲げて左膝に置き、肺や心臓をつかむように右手を左襟に掲げている

 

女性のモデルは、シーレの妻エディト(旧姓ハルムス)ではなく、かつての恋人ウォーリーの可能性がある。

 

描かれた当時、エディトは第一子を妊娠しており、後日、女性の股間に置かれた花束を、甥のトニがモデルとなり、毛布を巻いた子供に重ね描きしたという。

 

父親の姿は、メランコリックな「分離感」をもって、背後の闇に近づいているが、絵画的にもテーマ的にも、他の人物と本質的に一体化している。それは、諦観の最終的な自己像を形成しているが、かつての怒りや苦悩はない。

 

男の左手など、未完成と思われる部分もある。

 

《家族》の絵は、シーレの最も静かで悲しい作品の1つである。アーティスト自身、妻のエディス・ハームズ、そして生まれていない子供を描いている。画家が自分の死を予感し、悲劇を予見していたのかどうかはわからない。しかし、この作品には最初から破滅と恐怖が支配していた。

 

家族の緊密な絆を示している。しかしエゴン・シーレの『家族』には何か暗いものが浸透しており、家族を持つことへの希望が悲しい予感に変わったような芸術家でさえ知られていない何かである。

 

シーレは、1918年2月にグスタフ・クリムトが脳卒中とスペイン風邪による肺炎で亡くなった後、おそらくウィーンを代表する画家となった。

 

クリムトの死後はウィーンの前衛芸術家のリーダーとして、あらゆる展覧会のトップを走るようになった。その上、シーレは結婚し、大きなアトリエを手に入れ、巨大な絵画のシリーズを構想していた。

 

1918年にヨーロッパを席巻し、数千万人の命を奪ったスペイン風邪の流行にあい、エゴン・シーレは強大で恐ろしい絵を描き上げた。

 

この流行は、第一次世界大戦の末期に始まり、大規模な軍事衝突よりもはるかに多くの人々が犠牲になった。軍隊はヨーロッパ中を移動し、列車や飛行船は、致命的な病気を容赦ないスピードで町や国中に広めた。

 

現在、「スペイン風邪」についての百科事典的記事や歴史的エッセイは、エゴン・シーレの「家族」の絵によって説明されている。



■参考文献

https://www.artpedia.asia/egon-schiele/、2023年1月5日アクセス