【作品解説】フランシスコ・デ・ゴヤ「戦争の惨禍」

戦争の惨禍 / The Disasters of War

秘密裏に制作したスペイン王室批判作品


《戦争の惨禍》1810-1820 Plate 3: Lo mismo
《戦争の惨禍》1810-1820 Plate 3: Lo mismo

概要


作者 フランシスコ・デ・ゴヤ
制作年 1810-1820年
メディア えっチング

《戦争の惨禍》は1810年から1820年にかけてフランシスコ・デ・ゴヤが制作した版画(エッチング)作品。

 

ゴヤは板を制作する際、制作意図は特になかったが、美術史家の多くは、1808年にマドリードで発生したフランス軍に対するスペイン市民の反、その後1808年から1814年までの半島戦争、そして1814年のブルボン王朝復興体制による一連の自由主義運動の勃興と頓挫を表現したものだと見なしている。

 

ナポレオン皇帝とスペイン間での戦争中、ゴヤはスペイン王室の第一宮廷画家の立場にあり、スペントとフランスの支配的立場にある人々の肖像画を制作していた。

 

当時ゴヤは戦争に強く影響を受け、注文絵画とは別にプライベートで戦争に対する自分の思いを描いた版画を制作していた。その内容はフランス王室の復興とブルボン王朝を批判する内容だった。62歳のゴヤは体調が悪くほとんど聾唖状態で版画制作を始めた。

 

この作品はゴヤが秘密裏に制作していたため生存中は一般公開されておらず、死後35年後の1863年に版画集が出版された。1000部以上印刷されたが、のちに出版されたものは品質が良くなく、多くの版画コレクションが少なくとも一冊は所蔵している。

Plate 34: Por una navaja (For a clasp knife).
Plate 34: Por una navaja (For a clasp knife).
Plate 4: Las mujeres dan valor
Plate 4: Las mujeres dan valor