象徴主義 / Symbolism
ゴシック的要素のあるロマン主義や印象主義
概要
象徴主義は、フランス、ロシア、ベルギーを起源とする19世紀後半の芸術運動。文学では1857年に刊行されたシャルル・ボードレールの「悪の華」が象徴主義の起源とされている。辞書的な定義でいえば、「直接的に知覚できない概念、意味、価値などを、それを連想させる具体的事物や感覚的形態によって間接的に表現すること。ハトで平和を、白で純潔を表現させる類」(三省堂「大辞林」)。
ボードレールが絶賛してフランス語に翻訳したエドガー・アラン・ポーの作品は、象徴主義文学として多大な影響を与え、のちの文学や芸術の多くで比喩やイメージの源泉となった。象徴主義は、1860年代から1870年代にかけて、ステファヌ・マラルメやポール・ヴァレリーらによって発展、1880年代に象徴主義の美学は一連の檄文によって連結化され、同世代の著述家を魅了した。
「象徴主義」という名称自体は、批評家のジャン・モレアスが、デカダン文学や芸術との関わりから象徴主義の作家を区別するために作った言葉であるとされている。モレアスは1886年に「ル・フィガロ」紙に「象徴主義宣言」を発表し、これをもって正式な意味での象徴主義元年とすることもある。
視覚芸術における象徴主義は、文学とはスタイルが異なり、ロマン主義や印象派においてゴシック的な要素が見られる作品のことを指す。また、印象派に対する反発を起源にもしており、目に見える世界だけを負いかえるリアリズム、その延長線上の印象主義に対する反動であるため後期印象派の1つの流れとしても位置づけられている。
代表的な作家はオディロン・ルドン、グスタフ・クリムト、ギュスターブ・モロー、エドバンド・ムンクなどである。
目に見えないものや精神的な世界に向かって開かれた窓の表現であることから、象徴主義はのちにカンディンスキー、モンドリアン、シュルレアリスムなどの前衛芸術に影響を与えた。