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【作品解説】グスタフ・クリムト「ストクレット・フリーズ」

ストクレット・フリーズ / Stoclet Frieze

「期待」「生命の樹」「成就」の3連画


概要


作者 グスタフ・クリムト
制作年 1905年〜19011年

《ストクレット・フリーズ》は、クリムトが1905年から1911年にかけてベルギーのブリュッセルにあるストックレー宮殿から依頼され制作した3連のパネル画。

 

それぞれのパネルには「期待(左側)」「生命の樹(中央)」「成就(右側)」が描かれている。この作品は、金箔を多用したクリムトの「黄金期」に制作された。

 

クリムトは、ストックレー宮殿の大食堂の壁3面を飾る「ストックレー・フリーズ」の制作を依頼された。この邸宅は、ベルギーの銀行家アドルフ・ストクレとその妻シュザンヌのために、オーストリアの建築家ヨーゼフ・ホフマンがブリュッセルの私邸として建てたものである。ストックレー夫妻は熱心な美術品コレクターで、新居の設計と建築を各分野のトップアーティストに依頼した。

 

このフリーズにクリムトが使用した素材は、陶器、金箔入りタイル、真珠、大理石などである。クリムトはこの作品について、「私の装飾品開発の究極の段階であろう」と語っており、ユーゲントシュティールな輝きを放っている。

生命の樹


《生命の樹》,1909年
《生命の樹》,1909年

この作品でクリムトは、神学、哲学、神話の中で何千年も続いてきた「生命の樹」という古くからのシンボルに取り組んでいる。

 

この概念は古代エジプト時代に遡り、クリムトもこの作品に影響を受けていると思われる(木の中にあるエジプト風の目や鳥に注目)。生命の樹は、天国、地獄、地球、生と死を含むすべてのものの相互関係を象徴している。

 

クリムトは、この象徴的なシンボルにインスピレーションを受け、独自のスタイルと芸術的な方向性で、この作品を制作した。

 

渦巻く枝は神話的な象徴性を生み出し、生命の永続性を示唆している。枝はねじれ、渦を巻き、回転し、らせん状にうねり、強い枝、長い蔓、壊れやすい糸のもつれを生み出し、人生の複雑さを表現している。枝が空に向かって伸びる生命の木は、その下の大地に根を下ろし、天と地を結びつける。

 

「生命の樹」の制作時期(1909年)にクリムトは、《接吻》のほか《ユディトⅡ》、《帽子と羽毛ボアの女》 を制作しており、またクリムトは最も自信と経験を持ち、大胆な作品制作に挑み、金彩を多用するようになった頃である。

期待


《期待》,1910年
《期待》,1910年

『期待』パネルには、同じく古代エジプト美術から着想を得たかのような、模様のあるドレスを着た女性が描かれている。彼女のドレスは装飾性が高く、地面に近づくにつれて広がっていく。

成就


《成就》
《成就》

『成就』パネルには、抱擁を交わすカップルが描かれている。二人の服は、まるで二人を包み込むかのようである。人物の衣服の模様の中にある要素は、木そのものに見られるものを模倣している。

左パネル。左パネルには、生命の樹と女性像が描かれている。
左パネル。左パネルには、生命の樹と女性像が描かれている。
右パネル。アドルフ・ストクレと彼の妻の描写である可能性が抱擁するカップルが描かれている。
右パネル。アドルフ・ストクレと彼の妻の描写である可能性が抱擁するカップルが描かれている。


■参考文献

https://fr.wikipedia.org/wiki/Frise_Stoclet、2023年1月5日アクセス