シモーヌ・リー / Simone Leigh
黒人女性の疎外感や主観性を近代的に表現
概要
生年月日 | 1967年生まれ |
国籍 | アメリカ |
職業 | 現代美術家 |
表現媒体 | 彫刻、インスタレーション、ビデオ、パフォーマンス |
公式サイト | simoneleigh.com |
シモーヌ・リー(1967年生まれ)は、アメリカの現代美術家、彫刻、インスタレーション、ビデオ、パフォーマンス、ソーシャルプラクティスなど、さまざまなメディアで作品を制作している。
リーは自身の作品を「オートエスノグラフィック」と呼び、アフリカ美術やヴァナキュラー・オブジェ(土着芸術)、パフォーマンス、フェミニズムなどに関心を寄せている。
作品では、有色人種の女性が疎外経験を社会の中心的存在として捉え直しているという。
また、リーは自分の作品について「黒人女性の主観性」に焦点を当てており、歴史の様々な行き詰まりにおける複雑な相互作用に興味を持っていると語っている。
2022年のベネツィア・ビエンナーレで、黒人女性で初めて最優秀賞を受賞。イギリスの現代美術雑誌『ArtReview』が決めるアート・ワールドでもっとも影響力のあるランキング「Power 100」2022年で7位にランキングされた。
経歴
幼少期
シモーヌ・リーは1967年、イリノイ州シカゴでジャマイカ人宣教師のもとに生まれ、シカゴのサウスサイドの人種隔離の進んだ地区で育った。
幼少期についてリーは、「周りはみんな黒人だったから、自分の黒さは前もって決められないと思って育った。それは私の自尊心にとても良いことでした。私は今でも、あの坩堝の中で育ったことを幸運に思っています」と語っている。
1990年にインディアナ州リッチモンドのアールハムカレッジで美術の学士号と哲学の副専攻を取得し、卒業。
美術家として
「私は、哲学、カルチュラルスタディーズ、そしてアフリカとアフリカ系アメリカ人の芸術への強い関心を経て、芸術活動に至りました。それは、私のオブジェクトとパフォーマンスベースの作品に、エスノウグラフィク(民族誌)、特にオブジェクトを記録し記述する方法への関心を持ちました」
大学卒業後、リーはもともとソーシャルワーカーになる予定だった。国立アフリカ美術館でのインターンシップや、バージニア州シャーロッツビル近郊のスタジオでの勤務を経て、彼女はアートを仕事に選ぶことにした。
2015年にリーは、「本当に長い間、アーティストにならないようにしていたけれど、ある時点で、それをやめるわけにはいかないと気づいた」と話している。
その後、リーは、アメリカ陶芸の訓練とともにアフリカの陶器への関心を寄せ、それらを組み合わせ、モダニズム的な特徴を持ったアフリカのモチーフを制作している。
リーの作品は、アフリカ美術の伝統的な素材や形態を用いることが多く、パフォーマンスに影響されたインスタレーションは、歴史的な先例と自己決定が混在する空間を作り出している。彼女はこの組み合わせを「時間の崩壊」と表現している。
彼女の作品は、ジャンル横断的な文脈の中で陶芸を再構築する世代の一部と評されている。
リーは自身を彫刻家だとみなしているが、最近では社会彫刻、つまり一般の人々と直接関わる社会的実践の仕事にも携わっている。
現在、国内外の多くの機関で美術講義を行っており、また、ロードアイランドデザイン学校の陶芸科で教鞭をとっている。
2020年10月、リーは2022年のヴェネチア・ビエンナーレのアメリカ代表に選ばれた。 黒人女性としては初めてのことである。本展の作品「ブリック・ハウス」で金獅子賞を受賞した。
ブリック・ハウス
代表作の『ブリック・ハウス』は、スカートの形態と粘土の家を組み合わせた胴体部分と、コーンロウで編んだアフロヘアーの頭部を持つ彫刻作品である。
5900ポンドのブロンズ製胸像で、高さは16フィート(4.9m)、底面の直径9フィート(2.7m)の胴体部分を持ち、アフリカと米国南部の建築様式の基づいた年度の家とスカートの形を組み合わせている。
黒人女性像を表現していると思われるが、目が欠けているため、彫刻のアイデンティティが曖昧にされており、特定の黒人の個人またはグループに関連付けることはできない。
『ブリック・ハウス』は、ニューヨークのイ・ライン・プリンス公園に設置された最初の依頼作品であり、2019年秋にニューヨークにおける主要なパブリック・アート作品の新しいランドマークと設置された。
また、18ヶ月ごとに入れ替わる一連のアート・インスタレーションの一部であり、ハイラインで初めて現代美術の新しい依頼作品のみを扱うスペースに設置された作品である。
『ブリック・ハウス』は、リーが西アフリカやアメリカ南部など様々な地域の建築様式を人体と組み合わせた継続的な作品群「建築の解剖」シリーズの最初の作品でもある。
リーの彫刻は、ニューヨークという「古い工業時代のレンガ造りの建物の中にガラスと鉄のタワーが立ち並び、そこでは建築と人間のスケールが常に折衝している」場所に設置されているため、その場所と直接対照をなしている。
『ブリック・ハウス』は、2020年に、ペンシルバニア大学のユニバーシティ・シティ・キャンパスの玄関口にも、芝生に囲まれた形で常設された。
2022年の戴会ヴェネツィア・ビエンナーレのメイン展「夢のミルク」で登場し、リーはこのときに金獅子賞を受賞した。