サイモン・ロディア / Simon Rodia
天に昇る奇妙な塔の夢
小柄でありながら強靭な心を持つ一人のイタリア移民が、ロサンゼルスの地に永遠の足跡を刻んだ。約7000袋のセメントと壊れた瀬戸物を用い、ワッツ地区に立つ3つの塔を含む複雑な建造物群を33年の歳月をかけて築き上げた。彼の作品は、故郷の宗教行事の記憶を反映し、ナポリ近郊での幼少期の記憶と新天地での生活が交錯する中、人々の嘲笑を超え、アートとして永遠に残ることとなった。
概要
| 生年月日 | 1879年2月12日 |
| 死没月日 | 1965年7月16日 |
| 国籍 | アメリカ |
| ムーブメント | アウトサイダー・アート |
小柄でやせ形ながら強靭な体をしていたイタリアからの移民、サイモン・ロディアは、新天地ロサンゼルスの自宅庭に、驚異の構築物を築き上げた。7000袋のセメント、7万5000の具製、砕けた瀬戸物やタイル、そしてビンの山々を組み合わせ、33年の歳月を費やして3つの塔や船、アーチ、泉、小さな家屋を創り出した。これらのワッツ・タワーは、彼の幼少の記憶に刻まれた、ノーラの村で毎年行われた宗教行事の巨大な尖頭状の塔と、陽気な祭りの賑わいを呼び覚ます。
ロディアはナポリ近郊で生まれ、14歳のとき、徴兵を避けるために両親によって新大陸へと送り込まれた。ペンシルヴァニア州で炭鉱夫だった兄と共に暮らし、兄の死後は放浪の旅に出た。シアトルで結婚し、その後カリフォルニア州マーティネスで落ち着きを見つけるが、1911年に離婚し、新たな人生の章を開いた。その地で、彼は独り、時間と共に立ち上がるモニュメントを紡ぎだした。
ローディアはロングビーチの地に根を下ろし、建設の仕事に従事していた。1921年、彼はロサンゼルスのワッツ地区、東107番街1765番地にある三角形の土地を手に入れ、「ノストロ・プエプロ（私たちの町）」と呼ぶ壮大な建造物の構想を実現に移す。彼の手により築かれた骨組みのみの構造物は、ほぼ100フィートの高さにも達し、鉄筋コンクリートで固められたその姿は、1933年の大地震にも屈することはなかった。
窓拭き人が使うベルトを身に纏い、セメントのバケツ、コテ、そして貝、皿、鉢、小さな陶製の像、ビン、カーニヴァルグラス、鏡、タイルを詰め込んだ麻袋を手に、ローディアは1954年まで、毎夕、週末、休日を問わず、塔に登り続けた。75歳になった頃、人々の嘲笑と愚弄に心を痛め、自宅や塔など、すべての所持物をわずかな額で手放し、マーティネスへと帰途についた。
歯科医の診療所の上階の質素な部屋で余生を送ったローディアであったが、彼の魂の作品である7つの塔は、1961年にニューヨーク近代美術館の「アッサンブラージュのアート」展でカタログに6枚の写真として紹介され、また国の史跡目録に名を連ねた。
