· 

【作品解説】エゴン・シーレ「膝を曲げて座る女」

膝を曲げて座る女/ Seated Woman with Bent Knees

従来の美に対する挑発的な破壊


エゴン・シーレ《膝を曲げて座る女》,1917年
エゴン・シーレ《膝を曲げて座る女》,1917年

概要


作者 エゴン・シーレ
制作年 1917年
サイズ 46 cm × 30.5 cm
メディウム 紙に水彩、グワッシュ、クレヨン
所蔵者 プラハ国立美術館

《膝を曲げて座る女》は、1917年にエゴン・シーレによって制作された作品。紙に水彩、ガッシュ、黒のクレヨンを使っている。描かれているのは、シーレの妻エディットである。

 

限られた色彩、真っ白な背景、鋭いエッジで、従来の美の表現を覆し、醜くゆがんだ感覚と官能的でエロティックな美学を融合させた独特のスタイルが使われている。この作品は、オーストリア表現主義の典型的なスタイルといえる。

 

シーレは、これらオーストリアにおける表現主義の主要な提唱者であり、「形と感情の斬新な組み合わせ」という挑発的な概念を導入した

 

シーレはモデルのポーズを工夫することで、「グロテスク」な美学を表現し、美と醜の二項対立を打破したのである。

 

《膝を曲げて座る女》は、エディスの「お世辞にも上品な肖像画」ではなく、あからさまに挑発的な姿勢をとり、前景を切り取ることで、ギザギザの輪郭線による未解決感を表現している。

 

この作品はチェコ共和国プラハのプラハ国立美術館に所蔵されている。

背景


1907年、ウィーン美術アカデミーに入学したシーレは、そこでグスタフ・クリムトに出会う。クリムトはシーレの指導者として、恩人や画家、他の画家の名作を紹介する役割を果たした。

 

1909年、シーレは新芸術グループを結成し、1910年にはヌードアートを普及させ、やがてシーレの名は世に知られるようになる。

 

シーレの作品群は、異常な形状の人物や曲がった線とともに、現代の批評家の批判を呼び起こす、あからさまな性的描写が特徴的である。

 

1915年、シーレはイーディト(旧姓ハルムス)と結婚する。結婚直後から、エディトとその妹アデーレは、しばしば彼のミューズとして活動した。

 

1915年から1918年までの約3年間、シーレは曲がった輪郭線と自然主義的な人物像を融合する芸術家としての手腕を発揮する。

 

解説


1917年、シーレはエディスをモデルにして若い女性像を描いた《座った女》を発表した。地面に座っているように描かれたこの像は、カジュアルで挑発的なポーズを取っている。

 

リラックスしたポーズをとっているものの、神経質なエネルギーに満ち、攻撃性があると評されることもあった。

 

この女性の姿勢は、曲がった膝に頭をもたせかけ、もう片方の足を横に伸ばしている。緋色の唇、朱色の髪、セージ色の服装、シュミーズ、ストッキングは色彩豊かで、現代的である。

 

彼女の意味ありげな視線もまた、鑑賞者をまっすぐ見つめていて無視できない。

 

《膝を曲げて座る女》は、紙にガッシュ、水彩、黒クレヨンを用いて描かれている。被写体の髪、肌、服は、シーレの長く、目に見える、そして明らかに速い筆致によって斑点状に見える。

 

シーレは、意味ありげな色調やガッシュによる目でわかるストロークを取り入れることで、この作品の視覚的な存在感を完成させている。

 

この作品の線と斑点の表現力は、シーレがかなり乾いた崩れた絵具を使い、硬い筆と、それぞれの領域で異なる水の量を使うことで達成されている。

 

たとえば人物の髪にはストッキングよりも流動性の高い絵具を使って描いている。鋭角さも作品に現れている。

 

背景は完全に被写体を取り囲む空虚な、あるいは負の空間を形成している。これは、空虚に宙づりにされていることが多かったシーレの芸術における被写体の典型である。一方、パレットはクリーム色、白、黒、緑、赤、オレンジに限定されている。



■参考文献

https://en.wikipedia.org/wiki/Seated_Woman_with_Bent_Knees、2023年1月9日アクセス