【作品解説】マルセル・デュシャン「裸体、汽車の中の悲しげな青年」

裸体、汽車の中の悲しげな青年 / Nude (Study), Sad Young Man on a Train

汽車とデュシャンの平行表現


マルセル・デュシャン《裸体、汽車上の悲しげな青年》1911-1912年
マルセル・デュシャン《裸体、汽車上の悲しげな青年》1911-1912年

概要


作者 マルセル・デュシャン
制作年 1911-1912年
メディウム 油彩、キャンバス
サイズ 100 x 73 cm
コレクション ニューヨーク・グッゲンハイム美術館

《裸体、汽車上の 悲しげな青年》は、1911年から1912年にかけてマルセル・デュシャンによって制作された油彩作品。

 

デュシャンのセルフ・ポートレイト作品であり、1912年に発表した《階段を降りる裸体 No.2》の試験的作品。キャンバスの裏には「裸のマルセル・デュシャン(スケッチ)」と記されており、試験作だったことが分かる。

 

当時のデュシャンはキュビスムに関心を抱いており、落ち着いた色調、平面体で構成されたフラットな画面、抽象的な構図が強調されている。さらに《階段を降りる裸体.No2》で導入されたモーションピクチャーのような線も見られる。

 

当時、キュビスムを簡略化した線の反復とデュシャンは解釈しており、動く人物の位置の変化に着目し、並行線によって動きを表現することがキュビスムだと考えていたという。

 

また「裸体、汽車上の悲しげな青年」における主題は、汽車と通路を行ったり来たりする悲しい青年の2つの動きの並行表現であるという。前方へ向かってくる汽車の造形とうなだれた青年の反復的な形態が重なるように描かれている。まだシュルレアリスム(1924年)は現れていない頃だが、汽車とデュシャンのダブル・イメージのようなものである。

 

青年(パリからルーアンへ帰る汽車の中でパイプを吸うデュシャン)のデフォルメがあり、それはある種の形を分解した状態、つまりお互いに平行に移動しながら形を変え、直線的なパネルの上を扇型に広がっていくようなものである。

 

本作品と《階段を降りる裸体 No.2》を描き終えたあと、デュシャンはキュビスムや絵画への関心をなくし、言語遊びや機械的なオブジェに関心を移していく。

 

 

■参考文献

Nude (Study), Sad Young Man On A Train

 

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