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【美術解説】ロジャー・バレン「アフリカ最貧困家庭のシュールな風景

ロジャー・バレン / Roger Ballen

アフリカ最貧困家庭内のシュールな風景


概要


生年月日 1950年
国籍 アメリカ
居住地 南アフリカ共和国、ヨハネスブルグ
表現媒体 写真、インスタレーション
表現形式 ドキュメンタリー写真、シュルレアリスム
公式サイト http://www.rogerballen.com

ロジャー・バレン(1950年生まれ)はアメリカの写真家。1970年代から南アフリカ、ヨハネスバーグに移住して、生活をしている。

 

ドキュメンタリー写真家として活動を始め過去40年にわたってその写真表現を発展。「個人と建築空間との間における視覚的対話」「発見されたオブジェ」「家畜」といった独特な撮影方法が評価されている。

 

地質学者だっためカメラを携えて田舎の方へ向かう機会が多く、そうした中、南アフリカの隠れた小さな町を発見する。はじめは真昼の強い太陽の光を浴びた誰もいないストリートを撮影していたが、その後、貧しい家庭に関心を持ちはじめ、貧困家庭内の部屋と人々で構築されるシュールで狂的な異様な世界の撮影を始める。

 

発狂者が描いたような落書きのある壁、不自然な曲線が描かれる壁のドローイング。貧困モデルたちを取り囲んでいるシミだらけの壁は、モデルたちが普段生活している実際の自分たちの部屋であり、不自然に折れ曲がりながら這いずり回る電線や壊れたベッドや食器類、イヌやネズミとその死骸なども、すべて元々の部屋の同居人のようなものばかりだった。

 

こうした家庭内に飾られるインテリアやオブジェクトは独特なもので、閉じた世界の居住者たちの世界は、社会批判をよそにし、内面のメタファー表現として独特な風景を鑑賞者に与えることになった。

 

バレンの作品はよく「暗い(dark)」と評されることがあるが、バレン自身は基本的には心理描写であり、また人類の「影の部分」を探求した描写であると説明している。「影はダークより優れている。写真について暗いとは思っていない、私は「暗い」ものとは何なのか、明確にいえない。」と話している。

 

初期はドキュメンタリー写真だが、2001年に発売した過去20年の作品を収めた二冊目の作品集『Outland』以降、抽象的でシュルレアリスティックな写真撮影へ転向する。居住者が部屋の壁に描いたドローイングやオブジェなど周辺環境に興味を持ち始め、これまでの人物ポートレイトから、部屋の道具や人々を独特に配置した写真撮影へ移行するようになる。

 

批評家たちは、初期のドキュメンタリー撮影から、2冊目の作品集『Outland』移行の転向は、ドキュメンタリー写真の規則に反するものであると批判している。

 

2015年4月にPHAIDONより『Outland』が14年ぶりに復刻。45枚もの未発表作品が追加収録され、再編集されている。