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【美術解説】レイモンド・デュシャン=ヴィヨン「キュビスム彫刻の巨匠」

レイモンド・デュシャン=ヴィヨン / Raymond Duchamp-Villon

キュビスム彫刻の巨匠


レイモンド・デュシャン=ヴィヨン『キュビスムの家』,1912年
レイモンド・デュシャン=ヴィヨン『キュビスムの家』,1912年

概要


生年月日 1876年11月5日
死没月日 1918年10月9日
国籍 フランス
表現媒体 彫刻
運動 キュビスム、セクションドール

レイモン・デュシャン=ヴィヨンは、フランスの彫刻家。ノルマンディー地方ダムヴィルに生まれ、芸術家一家に育つ。兄ジャック・ヴィヨン、弟マルセル・デュシャン、妹シュザンヌ・デュシャン=クロッティとともに、近代美術に大きな影響を与えた。

 

1894年、兄とともにパリへ移り、ソルボンヌ大学で医学を学ぶ。しかし、1898年にリューマチ熱を患い、学業を断念。療養中に彫刻への関心を深め、独学で制作を開始する。

 

初期の作品は小さな彫像から始まり、やがて高い技術を習得。1902年と1903年にはフランス国立美術協会のサロンに出展し、この頃から「デュシャン・ヴィヨン」の名を用いるようになる。

 

1905年、サロン・ドートンヌで初個展を開き、翌年には兄ジャックとともにルーアンで展覧会を開催。1907年にはサロン・ドートンヌの審査員となり、彫刻界での評価を高めた。

 

パリ郊外のピュトー村に移ると、デュシャン三兄弟はセクション・ドールの会合に参加し、キュビスムの発展に貢献する。1911年には現代美術ギャラリー、1912年にはボエティ画廊でのサロン・ド・セクション・ドール展に出品し、モダンアートの重要な担い手となった。

 

1913年、ニューヨークのアーモリー・ショーに参加し、アメリカにモダンアートを紹介。その後、パリ、プラハ、ベルリンでも作品を発表し、国際的な評価を得る。

 

第一次世界大戦ではフランス軍に従軍しながらも、キュビスム彫刻の代表作である《大きな馬》の制作を続けたが、1916年末に腸チフスに感染。カンヌの軍病院で息を引き取った。短い生涯ながら、近代彫刻に革新をもたらした。

レイモンド・デュシャン=ヴィヨン『大きな馬』,1914-1931年
レイモンド・デュシャン=ヴィヨン『大きな馬』,1914-1931年

『大きな馬』は、1914年から1931年にかけて制作されたブロンズ彫刻で、現在はアメリカ・テキサス州ヒューストン美術館のリリー&ヒュー・ロイ・カレン彫刻庭園に設置されています。

 

この作品はキュビスム的要素を取り入れつつも、抽象表現にとどまらず、内在するエネルギーが躍動する傑作と評された。「完璧さがにじみ出ており、難しい芸術的目標が達成されただけでなく、それを上回っている。魅力的でウィットに富み、天才の才能を目にしていることは明らかだ」と高く評価されています。


■参考文献

https://en.wikipedia.org/wiki/Raymond_Duchamp-Villon、2025年2月8日アクセス