プッシー・ライオットという名前を聞いたことがありますか？彼らが何を主張し、どのように世界を変えているのか、ご存知でしょうか？もしそうでないなら、この記事では、フェミニズム、ゲイの権利、プーチン大統領のロシア政権への批判といったプッシー・ライオットのコンセプトについて詳しく説明します。また、ロシア正教会の総主教との関係についても触れていきます。ぜひご一読ください。

1.概要

2.略歴

2-1.起源

2-2.モスクワの救世主キリスト大聖堂事件

2-3.釈放後

2-4.独立した活動へ

3.イデオロギー

3-1.市民社会

3-2.フェミニズム

3-3.LGBTの権利

その後も彼女らは、さまざまな過激なパフォーマンスや抗議運動を行う。これまで、メンバーの核となるナデージダ・トロコンニコワ、マリア・アリョーヒナ、エカテリーナ・サムツェビッチが逮捕されている。

彼女たちに対する法的手続きは、特にアメリカやヨーロッパで大きな注目を集めた。

アムネスティ・インターナショナルなどの人権団体は、女性受刑者を「良心の囚人」と名付け、多くの著名人がその趣旨を支持した。

2022年にロシアがウクライナに進出した際にマリア・アリョーヒナは配送ドライバーに変装して軟禁を逃れ国外へ脱出。現在、メンバーは独裁政権から逃れ、世界中に亡命してウクライナを支援する活動を行っている。

プッシー・ライオットのパフォーマンスは、反体制芸術と呼ぶことも、芸術形式を巻き込んだ政治的行動と呼ぶこともできる。いずれにせよ、基本的人権と市民的・政治的自由に対して圧力をかける企業政治システムの抑圧の中での一種の市民活動である。

プッシー・ライオットは、カラフルなマスクと衣装を身につけた女性活動家がモスクワの公共空間でゲリラ的にパフォーマンスを行うパフォーマンス・アートと言われている。

メンバーになるには、「歌声がうまくなくても、パンクなんだから騒げばいい」ということを強調している。

• プーチン政権に対する過激な抗議運動で世界中で注目を集める
• フェミニズム・LGBTの権利を主張している
• ウクライナ戦争勃発後は世界中に亡命して活動している

プッシー・ライオット（Pussy Riot）は、2011年末にロシアの国政に反発して結成された集団である。

ラテン語のアルファベットで書かれた2つの英単語からなるその名前は、通常ロシアの報道ではそのように表示されるが、キリル文字に訳され「Пусси Райот」と表記されることもある。

当初は出演者の十数名と、インターネットに掲載する動画の撮影・編集などのスタッフを担当した15名程度で結成された。公式なメンバー制度はなく、誰でも参加できるとしているが、通常10人から20人のメンバーで構成されている。

メンバーは匿名性を好み、演奏時には鮮やかな色のバラクラバを着用し、インタビューには偽名を使うことで知られている。

メンバーの内、ナディア・トロコンニコワ、その夫のピョートル・ベルジロフ、サムツェビッチの3人は、2007年のアナーキスト芸術集団「ヴォイナ」の初期から2009年の分裂までメンバーとして活動していた。

ヴォイナの創始者オレグ・ヴォロトニコフと同じように、自分たちにもこの名前を使う権利があるとして、分裂後、モスクワを拠点に別のグループを結成し、同じく「ヴォイナ」と名乗って活動していた。

プッシー・ライオットは、イギリスのパンクロックとoi！バンドであるAngelic Upstarts、Cockney Rejects、Sham 69、The 4-Skinsから主に音楽的な影響を受けたと述べている。

また、アメリカのパンクロックバンドBikini Kill、パフォーマンス・アーティストのKaren Finley、1990年代のRiot Grrrlムーブメントに影響を受けたと述べている。

 当初は無名だったプッシー・ライオットだが、2012年2月にモスクワの救世主キリスト大聖堂で行われた公演をきっかけに、世界的にその名が知れ渡るようになる。

公演後、マリア・アリョーヒナ、エカテリーナ・サムツェビッチ、ナディア・トロコンニコワの3人の女性が公にされ、最終的に宗教的憎悪に起因するフーリガン行為で有罪判決を受けた。ほかの2人の女性メンバーは国外に逃亡し、名前が公表されることはなかった。

トロコンニコワは初期プッシー・ライオットのリーダー格として認識されている。彼女はノリルスクで生まれ、モスクワ大学出身。トロコンニコワと当時の夫ピョートル・ベルジロフは、2007年からヴォイナのメンバーだった。

ヴォイナは、橋の上に65m（210フィート）のペニスを描いたり、モスクワの生物学博物館で公衆猥褻行為をするなど、挑発的なアート・パフォーマンスに関与していた。

アイリョーヒナはシングルマザーで詩人であり、以前は環境活動家として活動していた。彼女はモスクワのジャーナリズムとクリエイティブライティング研究所の学生だった。

サムツェビッチは2008年、アイリョーヒナと同時にヴォイナに加入した。彼女はコンピュータープログラマーであり、モスクワのロドチェンコ写真・マルチメディア学校の元会員である。釈放後は公の場から姿を消し、現在は活動していない。

裁判中、ベルジロフは3人のバンドメンバーの代表としてロビイ活動をしていた。ベルジロフは人権団体、政治家、マドンナやレッド・ホット・チリ・ペッパーズなどの有名人と連絡を取り、7 年間の判決を受ける可能性がある女性たちへの支持を表明するよう世界中に根回ししていた。

しかし、彼がマスコミからバンドの「プロデューサー」であることが報じられるようになると、解任された。

トロコンニコワとアリョーヒナの釈放に対して、グループの他のメンバーが2人の釈放を喜ぶ一方で、距離をとりはじめた。

2人は刑務所の問題に振り回されて、グループの願望や理想-フェミニズム、分離主義への反対、権威主義や人格崇拝に対する戦いなど、不当に投獄されてしまったことすべてをすっかり忘れてしまったという。

グループのメンバーは、「私たちは反資本主義者です。私たちの芸術を見る人々からお金を徴収しません。私たちのビデオはインターネット上で自由に入手できます。観客は通行人で構成されています。私たちの出演は常に違法です。」

出所後、トロコンニコワとアリョーヒナがプッシー・ライオットの名を使って曲を発表するのを阻止しようとしたができなかったため、しばらくしてメンバーたちは「プッシー・ライオットは死んだ」と宣言した。

2015年、トロコンニコワとアリョーヒナはそれぞれの道を歩みはじめ、現在も似たような道を歩みながら、連絡を取り合っているる。プッシー・ライオットは当初の集団というよりトロコンニコワのプロジェクトと見る向きもあるようだ。

アイリョーヒナサイは、自身のショー「プッシー・ライオット」を制作した。ロシア人活動家としての彼女の人生を描いた「ライオット・デイズ」を制作し、様々なフリンジフェスティバルを巡っている。

二人は、政治的抗議のために誰でも「プッシー・ライオット」の名前を使うことができる、ゆるやかで非階層的なネットワークの活動を提唱している。

2018年FIFAワールドカップ決勝戦の際、不当逮捕に抗議するため、プッシー・ライオットと同一人物のメンバーが警察の制服を着てピッチに侵入した。ヴェルジロフ、経済学部の学生ヴェロニカ・ニクルシナ、ジャーナリストのオルガ・クラチョワ、オルガ・パフツォワの4人である。

また、2022年5月16日現在、ルーシー・シュタインという現メンバーがおり、フードデリバリーを装って自宅軟禁を脱出している。

2023年1月トロコンニコワが、ロサンゼルスのジェフェリー・ディーチで初の個展を開催、鑑賞者はバラクラバを着用するように指示し、プーチンに対する長年の反対意見を、「プーチンの遺灰」と題した新しいパフォーマンスのビデオで発信している。

プッシー・ライオットのメンバーの思想は無政府主義からリベラル左派まで様々だが、フェミニズム、反権威主義、そしてメンバーがソ連の「攻撃的帝国政治」を続けているとみなすプーチンへの反対で一致している。

教育、医療、中央集権化などを問題視し、地域自治や草の根の組織化を支持する。

メンバーは、無許可の集会を核心的な原理とみなしており、当局が認可した集会は脅威とみなさず、ただ無視するだけだと述べている。

このため、プッシー・ライオットのパフォーマンスはすべて違法であり、公共空間を共用していた。救世主大聖堂でのパフォーマンスの前日のリハーサル中にBBCのインタビューを受けたバンドメンバーは、鮮明な違法行為のみがメディアの注目を集めると主張した。

バンド初の北米ツアー中の2018年春に行われたSlateのインタビューで、トロコンニコワは経済的不平等が「プッシー・ライオットの大きな問題だ」と述べ、そうした不平等がロシアとアメリカの両社会で顕著な特徴であり、不平等に関する議論はアメリカとヨーロッパの両方で主流の政治談話から欠落していると強調した。

プッシー・ライオット結成の理由の１つは、「合法的な妊娠中絶に制限を課す」法律を引き合いに出し、女性を差別する政府の政策と見なしたことへの怒りである。

トロコンニコワによれば、プッシー・ライオットは「無政府主義者、トロツキスト、フェミニスト、自治主義者からなる世界的な反資本主義運動の一部」であった。

2012年2月の『Vice』誌のインタビューで、プッシー・ライオットのメンバーである「セラフィマ」は、影響を受けたフェミニストとしてシモーヌ・ド・ボーヴォワール、アンドレア・ドワーキン、エメリーン・パンクハースト、シュラミス・ファイアストン、ケイト・ミレット、ロージ・ブライドッティ、ジュディス・バトラーを挙げている。

プッシー・ライオットは、自分たちがフェミニスト・アーティストであり、ビキニ・キル、オイ！、コックニー・リジェクトなどの暴動運動や音楽グループ、アレクサンドラ・コロンタイ、ジュディス・バトラー、カレン・フィンリー、シモーヌ・ド・ボヴォワール、ウラディーミル・ブコヴスキなどの作家、活動家、芸術家から影響を受けていると話す。

メディアはプッシー・ライオットのフェミニズムの背後にある意味を見落とす傾向があった。その文化的背景は、西洋のフェミニズムとは大きく異なっていた。

『アメリカン・リーダー』誌のエリアナ・カンによれば、プッシー・ライオットのフェミニズムは、性差別、セックス、家庭生活について理想化された考えを生み出す権威主義政権の抑圧に焦点を当てたものだという。

プッシー・ライオットは、ロシアにおけるフェミニズムはまだ問題であり、ポスト・フェミニズムは達成されていないことを伝えようとしている。

ロシアの文化的背景を知らなければならず、そのフェミニズムの概念は西洋のフェミニズムとは異なるものとして認知してもらわなければいけなかった。

なぜならアメリカなどでは、フェミニズムは一般的な「女性の問題」へと発展したが、ロシアではそうではなかったからだ。 ロシアでは、ロシア正教会の長であるキリルが言うように、フェミニズムは「ロシアを破壊しうるもの」として見られた。

プッシー・ライオットのメンバーは、LGBTの権利を支持することを公言しており、2012年のインタビューでは、グループに少なくとも1人の性的マイノリティーのメンバーが含まれていることを確認しているという。

トロコンニコワとサムツェビッチは、2011年に禁止されたモスクワの「ゲイ・プライド」集会に参加し、集会が警察によって解散させられた後、短期間拘束された。

2018年のインタビューでトロコンニコワは、バンドにとってのトランスジェンダーの権利の重要性について語っている。

「私たちは、実際に女性であるために膣やクリトリスを持つ必要はなく、クリトリスを持つことが必ずしもあなたを女性にするとは限らないと思っています...」と述べた。また、「私たちはいつも、誰でもプッシー・ライオットの一員になれると言っているし、本当にそう思っているのよ」と付け加えた。

プッシー・ライオットは7曲と5本のビデオを発表している。AP通信の記者は、それらを「単純なリフと叫び声のような歌声に基づいた、ひどい録音」と評し、批評家はそれらを「アマチュア、挑発的、卑猥」と断じたと述べている。

A.V. Clubは「ファズアウトギターと古典的なライオット・ガールを踏襲する「優れたバンド」と評している。

プッシー・ライオットは従来のようなアルバムを発表していない。しかし、曲は多くのインターネットサイトで自由にダウンロードすることができ、『Ubey seksista（性差別主義者を殺せ）』というタイトルでまとめられている。

■参考文献

・https://en.wikipedia.org/wiki/Pussy_Riot、2023年1月23日アクセス