【作品解説】バンクシー「パラシュート・ラット」

パラシュート・ラット / Parachuting Rat

誤って除去されてしまったバンクシー作品


※1:バンクシー《パラシュート・ラット》
※1:バンクシー《パラシュート・ラット》

概要


作者 バンクシー
制作年 2003年〜
メディア 壁画、グラフィティ

《パラシュート・ラット》は2003年にオーストリアのメルボルンで制作したバンクシーのグラフィティ作品の1つ。

 

2010年4月26日、メルボルンにいくつかあるバンクシーの作品の1つが、議会から派遣された清掃業者に塗り潰されのをきっかけに、地元や国際的的な報道機関において、ストリート・アートの性質や保存・保護するための新しい対策などの議論を導くことになった。2012年5月にもほかの作品が偶発的な事故で破壊された。2015年時点ではまだ1つ残っている。

 

《パラシュート・ラット》は、パラシュートで降下する飛行用グラスをかけた紫色のネズミの絵である。バンクシー作品は大雑把にいえば「反資本主義」と「反戦主義」を主題とし、それらを風刺的であり挑発的な方法で表現するのが特徴である。

 

バンクシーは本作品について「ネズミは誰かもが嫌い、追い払われるに関わらず誰の許可もなくいる。もし、あなたが汚く、つまらない人間で、誰からも愛されてないなら、ネズミは究極の自身のモデルになるだろう。あなたはラットレースに勝てるか、それともいまだただのネズミか」とコメントしている。なお、バンクシーは芸術のアナグラムであることを表明する3年前からずっとネズミを描いていた。

制作にいたるまで


パラシュート・ラットはストリート・アート鑑賞を目的に1日に1000人以上の人が訪れる観光名所であるホイザー・レインのフォーラム・シアターの背後にある議会の玄関の上の壁に描かれた。

 

ホイザー・レインにはストリート・アート行為が許可された5つのエリアが有していたが、パラシュート・ラットはこれらのエリア外に描かれた。しかし、バンクシーの作品は人気であることを評議会に認知していたため、塗りつぶさずそのまま残していた。

 

メルボルンはストリート・アートを奨励するポリシーを明示しているが、非行少年や公共の土地へのグラフィティ行為などの問題も抱えている。メルボルン副市長のスーザン・ライレーは、住民が路地内の汚らしい様子に対して不満の声があがったため、ホイザー・レインに清掃業者を派遣した。

 

清掃業者はねずみで汚染されたゴミを掃除し、未認可の場所で描かれたストリート・アートをすべて除去した。その一貫でバンクシーの『パラシュート・ラット』も除去されてしまった。地元住民は清掃業者に食ってかかったが、清掃員は「私たちは市から言われたことをしただけだ」と返答した。

 

また、2012年5月にもほかのバンクシー作品が配管工事業者によって破壊された。

 

メルボルン市長ロバート・ドイルは、ホイザー・レインがストリート・アートになる以前の公共写真を公開し、「芸術を意図とした合法的表現」と現在のストリート・アートを称賛した。また『パラシュート・ラット』はモザリナではないけれども、清掃者の「良心に従って起きたミス」で除去されてしまったと話している。

 

メルボルン市協議会CEOのキャシー・アレクサンダーは、清掃業者はストリート・アートが許可されていない場所すべて清掃するよう支持されていたため、清掃者に責任はなく、また清掃者側にバンクシー作品の文化的意義についてきちんと伝えられていなかったと話している。