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【作品解説】バンクシー「ナパーム」

ナパーム / Napalm

悲劇的な娯楽を楽しむ「戦争経済」を批判


概要


作者

バンクシー

制作年 2004年
メディウム スクリーンプリント

2004年にバンクシーが制作した『ナパーム』は、ベトナム系アメリカ人写真家ニック・ウトのピューリッツァー賞受賞作品『戦争の恐怖』(1972年6月8日撮影)からの引用作品で、バンクシー作品の中でも、最も痛烈な反戦、反消費主義のメッセージが込められた作品です。

 

引用元の写真『戦争の恐怖』


引用元の作品は、南ベトナム空軍が誤ってナパーム弾(1200℃まで燃焼するジェル状の混合物)を村に投下した後、逃げ惑う子供たちと兵士を撮影した写真作品です。

写真の中心には、ナパームで焼かれ、両手を広げて走る泣きじゃくる少女の姿が映っています。

 

写真の少女は、ファン・ティ・キム・フックさんという人で、当時9歳のときにアメリカが支援する南ベトナム軍のナパーム攻撃を受けて、身体の30%を覆う大やけどをおいました。

 

フックさんとその家族は、他の民間人や南ベトナム軍の兵士らとともに仏教寺院に避難していました。

 

頭上を飛行する自軍の飛行機の音を聞いた兵士らは、攻撃されるのを恐れ、全員に逃げるよう促したのですが、しかし不幸にも、その一団は敵に間違えられてしまったのです。

バンクシーの『ナパーム』


バンクシーの『ナパーム』では、元の写真から他の子供たちや兵士を消去し、代わりにマクドナルドとディズニーのマスコットであるドナルド・マクドナルドとミッキーマウスが、少女と手をつなぎ、トレードマークの邪悪な笑みを浮かべています

 

元の写真は戦争の残虐行為を示していますが、バンクシーの作品は企業と資本主義の権力が子供たちに与える危険性を示唆しています。

 

少女が苦悩に満ちた表情を浮かべる中、ミッキーマウスとドナルドが楽しそうに笑うことで、アメリカのグローバリゼーション政策によって、少女が貪欲な資本主義主義の世界に引きずり込まれようとしていることが示唆されます。

 

また、戦争の最も挑発的で恐ろしい写真の1 つと、アメリカ文化の2つのシンボルとの比較は、戦争の商品化を浮き彫りにします。

 

子どもに人気のキャラクター


「ナパーム」のように、バンクシーはよく風刺と皮肉のために子どもに人気のキャラクターを使用します。

 

バンクシーの『くまのプーさん』は、愛されるキャラクターを社会的なメッセージのために使っています。有名なテディベアは、木の下で泣きながら、足を熊の罠に引っかけている。その隣には、蜂蜜の入った鍋ではなく、お金の入った鍋が置かれています。プーさんは、富と物質主義への貪欲さを見せつけられたのです。

バンクシー『くまのプーさん』(2005年)
バンクシー『くまのプーさん』(2005年)

バンクシーが2015年に企画したテーマパーク「ディズマーランド」では、ディズニーランドにそっくりのアトラクションと、崩れかけた城壁、消防車で作られたバーベキュー、魚の目を持つ人形など、不気味な展示物を合成させて「世界で一番憂鬱になれる場所」を作り出しています。

 

このテーマパークは、バンクシーが風刺的なメッセージを込めたアート作品を通じて、現代社会に対する批判を表現するために作られたものでした。

 

ディズマーランドは、わずか数週間で閉鎖されましたが、世界中から注目を集め、バンクシーが再び注目を浴びるきっかけとなりました。

まとめ


いかがでしたでしょうか?

  • ベトナム戦争中の写真『戦争の恐怖』を風刺的に引用し、反戦・反消費主義のメッセージを込めた作品である。
  • アメリカのグローバリゼーション政策によって少女が引きずり込まれる危険性を示唆している。
  • バンクシーは風刺と皮肉のために子どもに人気のキャラクターを使うことがよくある。

総合すると、バンクシーが制作した『ナパーム』は、ベトナム戦争中の写真『戦争の恐怖』を風刺的に引用し、反戦・反消費主義のメッセージを込めた作品です。写真の中心である少女と、マクドナルドとディズニーのマスコットであるドナルド・マクドナルドとミッキーマウスが手をつないでいる様子を描いており、アメリカのグローバリゼーション政策によって少女が引きずり込まれる危険性を示唆しています。

 

昨年はウクライナに現地入りして作品も制作しましたこれからのバンクシーの作品には目が離せませんね!!