【作品解説】ルネ・マグリット「恋人たち」

恋人たち / The Lovers

神秘のベールに包まれた恋人たち


ルネ・マグリット《恋人たち》(1928年)
ルネ・マグリット《恋人たち》(1928年)

概要


作者 ルネ・マグリット
制作年 1928年
メディウム 油彩、キャンバス
サイズ 54 cm x 73 cm
コレクション ニューヨーク近代美術館

《恋人たち》は、1928年にルネ・マグリットによって制作された油彩作品。男女が口づけを交わしているが、二人の頭は布で覆われている不思議な絵である。

 

「恋人たち」という主題は、西洋美術史では伝統的なものであり、この手垢のついた表現をマグリットは顔を隠し、不穏な感じにすることによって、見る者を幸せそうであるというより、むしろ不安にさせ、動揺させようとした。

 

布で覆われた顔のモチーフは「恋人たち」だけでなく、マグリット作品において頻繁に現れる。この理由としては2つある。

 

1つは、フランスの探偵小説『ファントマ』に出てくる正体不明の素顔の分からない主人公である。マグリットはこの作品の大ファンだったことでよく知られ、繰り返しファントマの絵を描いている。

 

もう1つはマグリットが14歳のときに入水自殺した母の影響である。母の遺体が川から引きあげられたさい、濡れたナイトガウンがまくり上がって顔を覆っていた光景に大変なショックを受けたという。以後、顔を隠すマグリット作品に大きな影響を与えているとのことだが、マグリット自身は母親の影響については否定している。

色相から推測する


特定の意味を推測するのは難しいが、この絵の色相は特定のテーマを暗示している。背景の青は水を連想させる色で、生命を象徴している。女性は赤い服を身に着けていますが、これは愛や情熱を表しているのかもしれない。

 

男性は黒いスーツを着ているが、これは死を象徴する色ですある。ベールは、おそらく汚染されている純度または純度を表すもので、白っぽいまたは灰色がかった色である。

 

この作品を「人間の根本的な孤独の肖像」として解釈し、完全な近親者でさえ理解できない姿を描いたと主張する人もいる。