白紙委任状 / Carte Blanche
「見えるもの」と「見えないもの」
概要
作者 | ルネ・マグリット |
制作年 | 1965年 |
メディウム | 油彩、キャンバス |
サイズ | 65 cm x 81 cm |
コレクション | ナショナル・ギャラリー |
《白紙委任状》は1965年にルネ・マグリットによって制作された油彩作品。1930年以降のマグリットの絵画でよく現れるようになったのが「だまし絵」と「哲学性」であるが、その代表的な作品。
描かれている馬は分割されてしまっており、その断片はあいまいに配置されている。また馬は樹々の背後と前にもあるように見える。馬上の女性はよく見ると木の幹に描かれているように見え、女性が乗っている馬の身体と思われる部分は木の色であるように見える。
マグリットは『ライフ』誌のインタビューでこの作品について「空間」と「移動」との関係を説明している。
「見える物は常に他の見える物を隠している。誰かが馬に乗って森を通り抜ける場合、その馬と人物はときどき見え、ときどき見えなくなる。だが、存在していることは察知できる。また馬と女性はときどき樹木を隠し、馬上の女性だけを隠すこともある。」
つまり私たちの思考は「見えるもの」と「見えないもの」を同時に見ることはできないが、両方の存在を察知することはできているということである。マグリットは「見えるもの」と「見えないもの」を同時に表現するために絵画を利用している。たとえば《光の帝国》では昼と夜という、同時に見ることはできないが両方の存在は察知している要素を表現した。
そして《白紙委任状》とは馬上の女性が、見えなかったり、見えたりしながら行動することを許す許可証なのである。