【作品解説】ロイ・リキテンスタイン「マスターピース」

マスターピース / Masterpiece

リキテンスタインの成功を予言した作品


概要


作者 ロイ・リキテンスタイン
制作年 1962年
メディア カンヴァスに油彩
サイズ 137.2×137.2cm
所蔵者 刘スティーブン・A・コーエン谦

《マスターピース》は1962年にロイ・リキテンスタインによって制作された作品。ベンデイ・ドット技法やフキダシが使われている。その後のリヒテンシュタインの成功を予言した物語的内容で知られている。

 

リキテンスタイン財団のサイトによれば、本作は1963年4月1日から4月27日にロサンゼルスのフェルース・ギャラリーで開催されたリキテンスタインの初個展で展示された作品の1つである。個展では1962年から1963年にかけて制作した作品が中心に展示され、本作のほかには《溺れる少女》や《スザンヌ婦人の肖像》などが展示されていた。

 

本作のイメージは、ある漫画のコマを下敷きにして描かれたもので、両方の作品ともに男女が描かれ、目の前にあるキャンバスをみながら何か話している。両方の作品とも構図はよくにているが、フキダシ内のテキストは違うものに変えられている。オリジナルでは「いつか苦しみは過ぎ去っていくだろう」と書かれているが、リヒテンシュタイン版では「この絵は傑作だわ! 近いうちにあたなの作品はニューヨークで注目されるでしょう」と書き直されている。

 

その後、同年にニューヨークのレオ・カステリ画廊で個展を開催してから、リヒテンシュタインはニューヨークの芸術業界で注目を始めるようになり、予言的な作品として注目された。

 

2017年にアメリカのコレクターでMoMA PS1董事長であるアグネス・ガンドが、1億6500万ドルで著名コレクターのスティーブン・コーエンに個人間取引で売却。この作品は彼女のアッパー・イースト・サイドのマンションに何年もかけていた作品である。

 

売却の意図について「大量に投獄された受刑者を解放するための刑事司法改革の資金調達のため」と説明しており、「これが私が死ぬ前にできる唯一のこと」とコメントしている。そのため本作は〈正義の資金〉と呼ばれた。なお、本作は最近の最も高額で取引された美術ベスト15内に含まれる。