川島優 / Yu Kawashima
現代社会の不安を女性を通して表現する
概要
生年月日 | 1988年 |
国籍 | 日本 |
出身地 | 静岡県 |
表現媒体 | 日本画 |
川島優(1988年静岡生まれ)は日本の画家。
愛知県立芸術大学入学後、2014年に「損保ジャパン美術賞FACE展」に出品した作品《Toxic》がグランプリを受賞したのをきっかけに注目を集める。
コンクリート、幾何学的模様、化学元素、ほかに社会的問題など本来は無機質的なモチーフと女性や自分の内面を並列するように描写する。
川島によれば現代はテレビ、雑誌、ソーシャルネットワーキングサービスなど、視覚的な情報媒体やテクノロジーに溢れているが、川島は幼少期を緑豊かな田舎で過ごした経験から、そのような人工的で無機的な世界への違和感が心の奥底に潜んでいるという。川島の作品には、その違和感と時代現代社会の「不安」が描かれている。
川島は習熟に時間がかかるとされる日本画の岩絵具を愛知県立芸術大学時代に修得、また西洋画の基礎デッサン力も高く、日本画と現代美術の両方から評価が高く、今最も期待されている若手作家である。
作品は損保ジャパン東郷青児美術館、豊橋市美術館博物館、愛知県立芸術大学、平野美術館など多くの美術館に所蔵されている。作品を取り扱っているギャラリーはWhitestone Gallery、FUMA Contemporary Tokyo / BUNKYO ARTなど。
技術
川島はフォルムやシルエットを絵画において重視している。黒と白のコントラスト、幾何学模様の黒と白のバランスから発生する独特な視覚効果が特徴的である。
作品全体がモノクローム調なのはフォルムやシルエットを強調した結果、自然と色が抑えられているだけであり、川島自身は色感をすごく持っているという。
川島は幾何学模様にもこだわりがある。幾何学模様は古代から現代まで使われてきた昔から変わらない、究極の形、完璧の象徴を暗示しているものであるという。
絵のモチーフとなっている女性は、複数の実在の女性を融合させたものが多く、実在はしているが実在はしていないような女性像。川島にとって女性は感情の象徴のため、川島自身の内面世界を女性像を通して表現している。実在している女性をそのままモデルとして描くこともある。
影響
主観的、装飾的、内面的などの点から、その先駆的作家であったギュスターヴ・モローの神秘的主義者としての内面的な「幻想」世界に影響を受けている。
ただ、川島の内面世界はモローのような社会から遊離した非現実的な「幻想」よりも、現実的な「内面的不安」の方に向いており、それを表現する方法としてフランシス・ベーコンを参照しているという。
また、川島はフリードリヒ・ニーチェやセーレン・キルケゴールなど実存主義の哲学者と自身の作品の類似性を見出している。なかでもニーチェの超人論敵思想やニヒリズムの構造に着目しており、自己の「不安」と対峙し、超克する思想は自身の絵画制作に何らかの影響を与えているという。
略歴
1988年静岡県生まれ。小学生のときに実家の叔父の部屋で見た明治の巨匠橋本雅邦の画集をきっかけに日本画の道を志す。 高校生のときに水彩とデッサン等で基礎を積み、愛知県立芸術大学に入学。日本画に本格的に触れ始める。
大学では、技術を徹底的に身に付けようと基礎デッサンをひたすら4年やり続けながら、日本画素材の技術も身につける。基礎デッサンと日本画素材技術を身につける。
同大学大学院に入学し、いよいよ自分の作品、黒を基調とした現代的空間の中に女性のいる現在の作風へと発展させる。使い始めた日本画素材は銅粉。紙に定着させると凸になる銅扮独特の素材性を活かして、川島独特の黒と余白の空間を生成。それは大学院時代の集大成的技術となった。
現在、同大学院博士後期課程。
本江邦夫評
ピエロ・デッラ・フランチェスカ「鞭打ち」の床面を連想させる独特な構図。極度に抑制された彩色のもと、むき出しのコンクリートの壁を背に消失点を低くとった急激な遠近法が特徴である。
ありがちな男たちの下心をくすぐる、可愛くてエロチックな、それゆえにどこか下品になりがちな少女とはまったく別の、むしろ禁欲的な表現であり、それは何よりもまず、官能というものをことごとく排した、黒を主体とした彩色に歴然としている。
川島優の描く現代の若い女性像は、謎に包まれながらも、適度な質感といくぶんイラスト的な線描が魅惑的な、その意味で手の届きうる錯覚を与える「現実」かもしれない。しかし一方で、黒魔術の少女のごとき不気味な様相、まさに凄みを呈しつつあることは興味深い。
それが通俗的で風俗的な美少女でないなら、それは本当のところ、いったい何なのか。
年譜表
■1988年
・静岡県に生まれ
■2012年
・再興97回秋の院展初入選
■2013年
・愛知県立芸術大学卒業作品展にて150号《あらゆる境涯を汚染する者 あらゆる境涯を浄化する者》が桑原賞受賞
・愛知県立芸術大学大学院博士前期課程美術研究科日本画領域専攻
・第68回春の院展初入選
■2014年
・損保ジャパン美術賞FACE展グランプリ、オーディエンス賞受賞
・損保ジャパン東郷青児美術館にて受賞作品120号《TOXIC》買い上げ
・損保ジャパン美術賞FACE展2014オーディエンス賞受賞
・愛知県立芸術大学25年度優秀学生賞受賞
・第6回トリエンナーレ豊橋星野信吾賞展優秀賞受賞
・豊橋市美術博物館にて受賞作品120号《INSIDE》買い上げ
・再興第99回秋の院展奨励賞受賞 日本美術院 院友推挙
・「川島優日本画展-GEOMETRY-」名古屋松坂屋美術画廊
・「川島優日本画展-日本画を未来にツナグ」秋野不矩美術館
■2015年
・「川島優展」ホワイトストーンギャラリー
・「川島優日本画 展 'Coexistence'」Fuma Contemporary Tokyo | Bunkyo Art
・「川島優日本画展」(福山天満屋)