【作品解説】レオナルド・ダ・ヴィンチ「アイルワースのモナ・リザ」

アイルワースのモナ・リザ / Isleworth Mona Lisa

《モナ・リザ》の初期未完成版?


レオナルド・ダ・ヴィントの工房《アイルワースのモナ・リザ》
レオナルド・ダ・ヴィントの工房《アイルワースのモナ・リザ》

概要


作者 レオナルド・ダ・ヴィンチと工房
制作年 1503−1516年
サイズ 84.5 cm × 64.5 cm
種類 油彩
メディウム クルミパネル
モデル リザ・デル・ジョコンド
所有者 個人蔵、スイス

《アイルワースのモナ・リザ》はルーブル美術館が所蔵しているレオナルド・ダ・ヴィンチの作品《モナ・リザ》とよく似た油彩作品。《初期モナ・リザ》とも呼ばれている。作者は不明。ストレートの黒髪と魅力的な微笑みは《モナ・リザ》と不思議なほどよく似ている。

 

専門家たちによれば、これらの類似点は単純に《モナ・リザ》の模倣作品であると指摘しているが、ごく一部の美術史家の間ではレオナルド自身による真作で、《モナ・リザ》の初期未完成版ではないかと考えるものもいる。

 

《アイルワースのモナ・リザ》は1913年にイギリスの貴族サマセットの邸宅でコレクターのヒュー・ブレイカーによって発見された。サマセット家がイタリアで購入し、イギリスへ持ち込んだという。その後、ブレイカーがサマセット邸からロンドンのアイルワースにあるアトリエに運び込んでから《アイルワースのモナ・リザ》という作品名が付けられた

 

この絵は1960年代にアメリカ人のヘンリー・ピューリツァーがブレイカーから購入する。彼はレオナルド・ダ・ヴィンチの本当のモナ・リザのモデルであったリサ・デル・ジョコンドの若いころを描いた絵画であると確信していたという。『モナ・リザはどこにいる?』というタイトルの本を自分の会社であるピューリッツァー・プレスから出版している。

 

本作品がレオナルドの作品かどうかという議論は何十年も行われてきた。2015年から2016年にかけて、信頼性のある学術出版誌が本作品はレオナルド・ダ・ヴィンチに帰属するものであると確認しているという。一方、ルーブル美術館は作品に対してコメントを発表していない。

 

 

所有権問題


しかし現在、この作品の真贋とは別に所有権をめぐる争議が行われている。CNNによれば、絵画の所有権を主張しているある名門ヨーロッパ一家が訴訟を起こしてたという。

 

この作品は1960年代にアメリカ人のヘンリー・ピューリツァーが購入したあと、1975年からずっとスイス銀行の金庫に保管されていたが、彼の死後の2008年に匿名の国際資本組合が作品を購入し、世界中のギャラリーで一般展示が行われるようになった。2014年にシンガポールで、その後、上海でも展示されている。

 

2019年6月、作品がフィレンツェのバストージ宮殿で展示された際に、匿名のヨーロッパ一家が本作品の25%の所有権を主張し、現在の争議となっている。

 

一家の申立人の弁護士であるジョバンニ・バティスタ・プロティによれば、以前の絵画の所有者が申立人の一家に対して作品の25%の権利の販売に同意したことを示す歴史的物証があると話している。

 

フィレンツェの裁判所は今月中にも一家の申立を受理し、所有権を調査している期間は絵画をスイス銀行に戻さないよう隔離して、イタリア国内に留めるかどうか検討しているという。