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【作品解説】ジャン=ミシェル・バスキア「In This Case」

In This Case

頭蓋骨シリーズの最後の作品


ジャン=ミシェル・バスキア《In This Case》(1983年)
ジャン=ミシェル・バスキア《In This Case》(1983年)

概要


作者 ジャン=ミシェル・バスキア
制作年 1983年
メディウム アクリル、オイルスティック
ムーブメント 新表現主義
サイズ 197.8 cm × 187.3 cm

《In This Case》は、1983年にジャン=ミシェル・バスキアによって制作された絵画作品。頭蓋骨が描かれたこの作品は、バスキア作品で最も高額な作品の1つとみなされている。2021年5月、クリスティーズ・ニューヨークで9,310万ドルで落札された。

 

バスキアが《In This Case》を発表したのは1983年、22歳のときで、このころにはすでに新表現主義の絵画で国際的に高い評価を受けていた。

 

6×6フィートのキャンバスに描かれたこの作品は、「ルビー色の背景に大きな頭蓋骨、燃えるような目、突き出た緑色の歯、そして崩れた解剖学的構造」という構図である。

 

美術史家のロバート・ファリス・トンプソンは、この作品について「バスキア色の最も強い作品の一つであり、次から次へと描かれるブラックフェイスの最高潮のポートレイト作品である。緑色の歯、黄色の目、紺色の肌など、あらゆる創造的なタッチが正確に再現されている」と批評している。

 

解剖学の描写は、バスキア作品全体に共通した要素である。これは、バスキアが幼少の頃、交通事故の療養中に母親から『グレイズ・アナトミー』の本をもらったことに由来する。

 

美術史家のフレッド・ホフマンは、「バスキアがほとんど執拗なまでに人間の頭部を描くようになったのは、外見的な肉体的存在から人間の心理的・精神的領域の隠された現実への通路としての顔に魅了されたからである」と批評している。

 

《In This Case》は、1981年から1983年にかけて制作された大きな頭蓋骨の絵画シリーズの最後の作品である。

 

1作目の《無題(髑髏)》(1981年)は、描かれた翌年にイーライ&エディス・ブロード夫妻が購入し、現在はロサンゼルスのザ・ブロード美術館に収蔵されている。2作目の《無題》(1982年)は、2017年にサザビーズで1億1,050万ドルで前澤友作によって落札され、アメリカ人アーティストのオークションでの最高額となった。

 

2018年、パリのルイ・ヴィトン財団で、三位一体の骸骨絵をフィーチャーしたバスキアの回顧展が開かれ、展示された。

 

「バスキアの最も魅力的な作品のひとつであるこれらのカンヴァスは、ヴァニタスを覆すような暴力性がある。《無題》と記された最初の2枚は「骸骨」と呼ばれることもあり、3枚目は「In This Case」と題されている。これらの頭蓋骨の解剖学的構造は、メメント・モリではなく、非常に大きな音で再生される増幅された記憶であり、その存在を否定できないほどの大音量である」と共同キュレーターのオリビエ・ミケロンは説明している。

 

2021年5月、クリスティーズの21世紀美術オークションにおいて、『In This Case』は事前予想の5,000万ドルを大きく上回る9,310万ドルで落札された。

 

出品者は、ファッションハウス「ヴァレンティノ」の共同創設者であるイタリア人実業家ジャンカルロ・ジャンメッティである。

 

ジアンメッティは、2002年にサザビーズで99万9500ドルで落札されたこの絵画を、2007年にガゴシアンから購入した。


■参考文献

https://en.wikipedia.org/wiki/In_This_Case、2021年12月1日アクセス