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【作品解説】ダイアン・アーバス「一卵性双生児」

一卵性双生児 / Identical Twins, Roselle, New Jersey, 1967

アーバスのビジョンを総括する写真作品


「みんな違っていて、それこそが私が愛するもの」。風変わりな被写体たちを独自の視点で切り取った写真家、ダイアン・アーバス。その代表作『ニュージャージ州ローゼルの一卵性双生児』は、同一性と個性、正常と異常が交錯するアーバスの世界観を象徴しています。この一枚に込められた物語と彼女の視点を紐解いてみましょう。

概要


作者 ダイアン・アーバス
制作年 1967年
媒体 ゼラチンシルバープリント
サイズ 38 × 37 cm
所蔵 シカゴ美術館

1966または1967年にダイアン・アーバスが撮影した写真作品『ニュージャージ州ローゼルの一卵性双生児』は、彼女の鋭い視点と独特の美学を象徴する一枚です。

 

「みんな違っていて、みんな違っていて、それこそが私が愛するものなのです。」

 

アーバスは、風変わりで非凡なものを愛し、その魅力を30年にわたるキャリアを通して追求しました。女装家や巨人、ヌーディスト、一卵性双生児など、個性的な被写体を多く撮影した彼女は、独自の視点でその「違い」を切り取っています。

 

特にアーバスが愛用したローライ製の中判二眼レフカメラは、ウエストレベル‐ファインダー形式を採用しており、被写体との距離感を独特なものにしました。この方法は、カメラを覗く視線が目の高さではなく腰の高さとなるため、彼女にとっては被写体と自然に向き合うための理想的な手法だったのです。

小さな町での出会い


1967年、ニュージャージー州ローゼルで地元の双子や三つ子たちを集めたクリスマス・パーティーが開かれました。

 

アーバスがその情報をどこで知ったのかは定かではありませんが、会場であるコロンブス騎士団のホールを訪れた彼女は、7歳の双子の少女たちを撮影しました。

 

彼女が細心の注意を払いながら撮影したのは、キャサリンとコリーン・ウェイドという名前の双子。緑のコーデュロイのドレスにレースのストッキングを履き、黒髪には白いヘアバンドをつけた2人は、アーバスのカメラに正面からじっと視線を送ります。

 

しかし、その表情には微妙な違いがあり、1人は少し微笑み、もう1人は眉をひそめています。

同一性と個性が交錯する世界


この写真は、服装や髪型の均一性によって双子の親密さが強調される一方で、表情の違いが彼女たちの個性を際立たせています。一見すると同一人物のように見える不気味さが、細部の違いによって裏切られる構成は、アーバスの作品に共通するテーマ、「正常と異常」の境界を鮮やかに描き出しています。

 

伝記作家パトリシア・ボスワースは、この写真について次のように述べています。

 

「彼女は『私は誰? あなたは誰?』というアイデンティティの問題に悩んでいた。この双子のイメージは、その核心にあるビジョンを映し出している。異常性の中にある正常、正常の中に潜む異常性を。」

 

『ニュージャージ州ローゼルの一卵性双生児』は、ダイアン・アーバスが追求した世界観を象徴する傑作です。この写真を通して、彼女の「違い」を愛する眼差しが、観る者に強烈な印象を与え続けています。