デペイズマン / Dépaysement
あるモノが思いがけない場所にある違和感
デペイズマンは、あるモチーフを本来あるべき環境や文脈から切り離して別の場所へ移し置くことで、画面に異和感を生じさせるシュルレアリスムの表現手法。
シュルレアリスムの美術は2つの道をとるようになる。「自動記述」の流れが1つ。そしてもう1つが「デペイズマン」の流れである。デペイズマンを使うシュルレアリストとして代表的なのがルネ・マグリット。平凡な林檎が思いがけない大きさで、そのうえ思いがけないところに置かれている、または岩が空中に浮かんでいるといった絵。
ジョルジョ・デ・キリコの形而上絵画も典型的なデペイズマン作品で、「愛の歌」ではギリシア彫刻とボールとゴム手袋と汽車が何の脈絡もなく並列されて置かれる。
この「デペイズマン」という方法の概念が、デュシャンのレディ・メイドの便器のオブジェやエルンストのコラージュを説明するようになる。その後、ポップ・アートでもデペイズマンは頻繁に使われるようになる。このデペイズマンの発想は、シュルレアリスムの美術の一方の流れに大きな力をおよぼして、「自動記述」よりもずっと広がりを持つようになった。
サルバドール・ダリの偏執狂的批判的方法・ダブルイメージもデペイズマンの系譜にあるもの。デペイズマン系のシュルレアリストは基本的に具象画である。一方で、自動記述系のシュルレアリストはジョアン・ミロやアンドレ・マッソンといった抽象的な絵画へと発展して、アメリカ現代美術の抽象表現主義に発展した。(参考文献:シュルレアリスムとは何か 巌谷國士)