ダリの夢 / Dreams of Dalí
ダリ作品を仮想現実空間で楽しめる
概要
『ダリの夢』は、サルバドール・ダリが1933年から1935年にかけて制作した絵画『古典解釈 ミレーの「晩鐘」』を元にした仮想現実体験空間。
2016年にフロリダ州セントピーターズバーグにあるサルバドール・ダリ美術館で行われている展覧会「Disney and Dalí: Architects of the Imagination(ディズニーとダリ:想像の建築)」で楽しむことができた。
鑑賞者は、3D化されたダリの仮想現実空間を360度歩きまわることができ、塔の中を歩いたり登ったりすることも可能。元の作品には存在しない宇宙象や縄跳びをする少女も登場するという。
また、ネット上でYouTubeに360度視点を変えながら見ることができるPV『ダリの夢:360°』が公開されている。プレイヤーをマウスで左右上下にドラッグすることで視点を変更することができる。2029年12月31日まで遊ぶことができる。
『古典解釈 ミレーの「晩鐘」』とは
『古典解釈 ミレーの晩鐘』は19世紀のフランスの巨匠のジャン=フランソワ・ミレーの『晩鐘』をダリが独自に解釈した作品。
ダリは若かった頃、世界で最も有名な絵画の1つであるジャン=フランソワ・ミレーの『晩鐘』の絵は、ポストカードやティーカップやインク入れなどさまざまな日用品に印刷されていた。19世紀後半のこの絵は、農作業を終えた農地で頭を垂れて祈りを捧げる経験な夫婦を描いたものである。
多くの人はこの絵に対して普通、センチメンタルなものを感じるだろう。しかしダリは少し異なる。
ダリの解釈によれば、胸に祈りを捧げて頭を垂れている女性は、無意識の性的欲求を示しており、カマキリのポーズを示して男性を襲おうとする女性の性的パワーのあらわれだという。ダリは女性の中に眠る官能性に秘められて危険性とカマキリに関連付けている。
一方の男性は帽子で股間を隠しており、頭をうなだれているが、これは男性の性的抑圧、または性的不安を表現しているものだという。
本作では、この夫婦は月明かりに照らされたフィゲラス近郊のアンボルダ平原にそびえたつ古代の建築物の廃墟として描いている。本来は岩石だが廃墟に置き換えている理由として、アーノルド・ベックリンの「死の島」を参照している可能性が大きい。
またダリにとっての女性とは支配的なパートナーであるため、本作の女性は「晩鐘」の女性よりも背が高く描かれている。
絵画の前景には、大人と子どもの小さなシルエットが描かれている。この子どもがダリで、大人はダリの父親である。なお廃墟の横に座っているのはダリの乳母だという。