ダリ作品におけるさまざまなシンボル
溶けていく時計
ダリは作品内に独自のシンボルを頻繁に描いている。代表的なシンボルである「溶ける時計」は「記憶の固執」で初めて登場した。「溶ける時計」はアインシュタインの「特殊相対性理論」や「非固定性」を暗示している。ダリによれば、「溶ける時計」のアイデアは、ある暑い夏の日、ガラが食べていたカマンベールチーズが溶けていく様子を見て思いついたという。
宇宙象
次にダリがよく使うシンボルは宇宙象である。宇宙象は1944年制作の「目覚めの一瞬前、ザクロの実のまわりを一匹の蜜蜂が飛んで生じた夢」で初めて登場。
宇宙象はイタリアの彫刻家であるジャン・ロレンツォ・ベルニーニの彫刻「オベリスクを背負う象」を独自に改良したもので、足の部分が蜘蛛の足のように細長くなっていて全体的に浮遊した状態になっている。
ずっしりとした象の巨体と弱々しく足の組み合わせは「溶ける時計」とほぼ同じ暗示をしており、「時空の歪み」を表しているという。ほかに構造と無重力の対比、権力と無力の対比などを表している。
卵
卵は「出産前の子宮の状態」を表しており、希望と愛のシンボルである。
さまざまな生物たち
ダリ作品にはさまざまな動物が現れる。アリは「死」と「腐敗」を、カタツムリは人間の頭(つむじ)を、イナゴは「恐怖」と「パニック」を象徴している。また、ダリとダリの父親ともにウニをはじめとした海産物が好きで、特にウニの対称性に魅了された。そのためダリの作品にはロブスターなどさまざまな海産物が現れる。