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【作品解説】サルバドール・ダリ「ツバメの尾」

ツバメの尾 / The Swallow's Tail

ダリ最後の創造物はカタストロフィ理論


サルバドール・ダリ《ツバメの尾》(1983年)
サルバドール・ダリ《ツバメの尾》(1983年)

概要


作者 サルバドール・ダリ
制作年 1983年
メディウム 油彩、キャンバス
サイズ 73 cm × 92.2 cm
コレクション ダリ劇場美術館

《ツバメの尾》は1983年5月に制作されたサルバドール・ダリの最後の油彩作品。

 

ガラが亡くなった1年後に「これが最後の絵だ。」と叫び、描き上げた作品。その後、ダリは絵を描いていない。

 

ガラと過去に見たツバメの軌跡と、数学者ルネ・トムの数学理論「カタストロフィ理論」を基盤にして制作されている

 

生前ダリは、トムのカタストロフィー理論を「世界で最も美しい数学理論」と絶賛していた。

 

ルネ・トムは、4次元空間の仮説として、考えられる7つの均衡面を想定し、その面を「7つの基本カタストロフィー」と呼んだ。すなわち、折り目、カスプ、ツバメの尾、蝶、双曲臍、楕円臍、放物線臍の7つである。

 

ダリは、トムの四次元空間の概念にちなんで、「ツバメの尾」と名付け、トムが「カスプ」と呼ばれる2番目のカタストロフィーグラフであるS曲線形状と組み合わせた

 

ツバメの尾・カタストロフ面
ツバメの尾・カタストロフ面
カスプ・カタストロフの図
カスプ・カタストロフの図

また、トムのモデルが、音符や数学の記号のようなものと並列され描かれている。伝統的なF字孔にある小さな突起がないため、積分記号のような数学的性格を暗示している。

楽器のF字ホール
楽器のF字ホール

また、ルネ・トムとの最初で唯一の出会いをダリは回想して、トムと地殻変動プレートの研究について話し合ったという。そのときダリは、トムが1960年代に宇宙の中心だと宣言したフランスのペルピニャン(スペイン国境近く)の鉄道駅について質問した。

 

トムは、「スペインは、正確に、つまり、今日のペルピニャン鉄道駅が建っているあたりに軸足を置いていたと断言できる」と答えたと伝えられている。

 

ダリはトムの言葉にすぐに魅了され、絵画《ヨーロッパの位相的誘拐-ルネ・トムへのオマージュ》を制作。左下隅に、"ツバメの尾 "と密接に関連する方程式が描いた。

《ヨーロッパの位相的誘拐-ルネ・トムへのオマージュ》(1983年)
《ヨーロッパの位相的誘拐-ルネ・トムへのオマージュ》(1983年)

 

■参考文献

https://en.wikipedia.org/wiki/The_Swallow%27s_Tail、2023年1月13日アクセス

 

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