チャールズ・ザ・ファースト / Charles the First
ビバップ演奏者チャーリー・パーカーへのオマージュ
概要
作者 | ジャン=ミシェル・バスキア |
制作年 | 1982年 |
メディウム | 木製パネルにアクリル、オイルスティック、三連画 |
ムーブメント | 新表現主義 |
サイズ | 198 cm × 158 cm |
ジャズ
《チャールズ・ザ・ファースト》は、1982年にジャン=ミシェル・バスキアによって制作された絵画。
この作品は、ビバップの発展に貢献したジャズサックス奏者、チャーリー・パーカー(愛称:バード)へのオマージュである。
1985年、バスキアは『ニューヨーク・タイムズ』誌にこう語っている。「17歳の頃から自分はスターになれるかもしれないと思っていた。自分のヒーロー、チャーリー・パーカーやジミ・ヘンドリックスのことを考えていた......これらの人々がどのようにして有名になったのか、ロマンを感じていたんだ」。
バスキアはビバップ(モダン・ジャズ)が大好きで、それが彼の芸術の原動力になったと、ロンドンのバービカン・センターで開催された「バスキア:Boom for Real」の共同キュレーターであるエレノア・ネア氏は語っている。
実際、バスキアは、《Bird on Money》(1981年)、《CPRKR》(1982年)、《Discography I》(1983年)、《Horn Players》(1983年)、《Arm and Hammer II》(1984年)、《King Zulu》(1986年)など、30点以上の絵画でジャズ・ミュージシャンやレコーディングについて言及している。
2005年、プレスティッジ・レコードからコンピレーション『Basquiat Salutes Jazz』が発売された。音楽ジャーナリストのトム・テレルは、ライナーノートにこう寄せている。
「パーカーのビバップがジャズを超えて世界中の音楽や非音楽のポップカルチャーに影響を与えたように、バスキアの遺産はヒップホップやユーロポップ、インディーズ映画やポスト・エレクトリック・マイルス・ジャズに影響を与えた。二人とも、文化を超えた即興演奏の絶対的な禅の達人だった」。
王冠
作家のジョーダナ・ムーア・サゲスは、「バスキアの作品を貫く王冠のモチーフは...アーティストの力を主張するものと解釈されることが多い」と述べている。
《チャールズ・ザ・ファースト》では、バスキアがよく利用するモチーフの王冠が、キャンバスの左上隅に位置し、「THOR 」(ゲルマン神話における強さを象徴する神)という名前の上に四角く囲まれている。
サジェスは、この絵の王冠はニューヨークのグラフィティ・ムーブメントにおけるヒエラルキーに言及しているという。
「他人の作品を賞賛するグラフィティライターたちは、作品の横にシンプルな、多くの場合3点王冠を描くことで、作品への敬意を表している。特定のアーティストには「キング」と呼ばれた」という。
また、この王冠は、ジャズ文化における王権の概念や、デューク・エリントン、カウント・ベーシー、ナット・キング・コールなどの才能ある演奏家の冠を意味しているのではないかと分析されている。
バスキアの元ガールフレンド、スザンヌ・マルークは、バスキアが大好きだったアニメ「リトル・ラスカルズ」のエンドクレジットで、キング・ワールド・プロダクションのロゴの上に王冠が描かれていたことから、この王冠が生まれたと主張している。
サジェスは「『チャールズ・ザ・ファースト』はTHORやイギリスのチャールズ王を指すだけでなく、カートゥーン、グラフィティ、ジャズ・カルチャーなどのサブカルチャーを結びつけ、社会的、歴史的、芸術におけるヒエラルキーへの挑戦姿勢を表現したもの」と結論づけている。
ジェイ・Zへの影響
王冠に合わせて、バスキアはキャンバスの左下に「MOST YOUNG KINGS GET THEIR HEADS CUT OFF」と書き、「YOUNG」の文字を消している。
このフレーズは、ラッパーのジェイ・Zが歌う「Most Kingz」に影響を与えた。ラッパーであり、バスキアのコレクターでもあるジェイ・Zは、この絵の版画を所有しているが、回顧録『Decoded』の中で、このセリフについて次のように解釈しているという。
「ある地位を得るとどうなるか。あなたは標的になります。人々はあなたの頭、王冠、肩書きを奪おうとする。男も女もしてはいけないような方法で妥協したり、犠牲になったりして、あなたをおとしめようとするのです」。
■参考文献
・https://en.wikipedia.org/wiki/Charles_the_First_(1982_painting)、2021年12月9日アクセス