【美術解説】カミュ・ローズ・ガルシア「悪夢のディズニー」

カミーユ・ローズ・ガルシア / Camille Rose Garcia

悪夢のディズニー


「Snow White Cover」(2011年)
「Snow White Cover」(2011年)

概要


カミュ・ローズ・ガルシア(1970年11月18日生まれ。)はアメリカの画家、彫刻家。ロサンゼルス在住のロウブロウ・アーティスト。


ウォルト・ディズニーやフィリップ. K.ディック、ウィリアム・バロウズ、シュルレアリスムに影響を受けたゴシック風の画風で知られる。『Juxtapoz』『Rolling Stone』などのロウブロウ雑誌で取り上げられながら知名度を高め、国際的評価を得るようになる。


彼女の作品はロサンゼルス・カウンティ美術館やサンノゼ美術館に収蔵されている。


「Sneewitchen」(2009年)
「Sneewitchen」(2009年)
「The Queen in her Lair」(2011年)
「The Queen in her Lair」(2011年)
「Dance Macabre」(2010年)
「Dance Macabre」(2010年)

略歴


幼少期


ガルシアの両親は音楽学校で出会った。メキシコ出身の父は映画プロデューサーでベトナム戦争に反対する左翼活動家。フランスの血を引く母は北カリフォルニア出身の壁画職人だった。

 

ガルシアの両親はガルシアが1才のときに離婚。あとは母が一人でディズニーランドに近接した住居で、ガルシア姉妹を育てた。


ガルシアのロウブロウへの目覚めは、幼少時のディズニー体験もさることながら、ともにアーティストである両親や生まれ育った郊外都市ロサンゼルスやオレンジ・カウンティのパンク文化の影響が大きい。


メキシコの絵馬、ドイツ表現主義など、既成の社会体制やアート業界に対するアンチテーゼ的な思想を両親から受け継いだことが、ロウブロウアートへの入れ込みに拍車をかけた。

 

美術制作の訓練はまず誰よりも母からの指導であり、初めての本格的アートは、17才のときの母と共同制作をしたグラフィティアートで、地元L.Aパンクシーンとの出会いは13、14才ごろだった。

バンドとのコラボレーション


ガルシアは1994年にカリフォルニア大学デービス校で美術学修士号を取得し、また1992年にオーティス美術デザイン学校で美術学修士号を取得している。


しかし、6年間の学校生活はガルシアとって苦い思い出であり、幻滅したものだったようだ。生まれたときからアンチテーゼ的な環境で育ったガルシアとアカデミックな大学美術とは肌が合わないのも無理はなかった。

 

卒業後、ガルシアは家に戻り、カリフォルニア州のハンティントンビーチに移動することを決める。


また『The Real Minx』というバンド活動を開始。自分本来の方向のままでアーティストとして活動する確信を得たのは、大学で美術、芸術の学位や博士号を取得したことではなく、クレイトン兄弟やマーク・ライデンを中核とするL.Aロウブロウアートシーンの影響からであると確信したようだ。

 

バンド活動をきっかけに、ガルシアの作品は『Modern Painters』『Juxtapoz』『Rolling Stone』『Flaunt』『BLAB!』といったロウブロウやパンク雑誌に掲載されるようになる。ガルシアはまたバンド「ohGr」のセカンド・アルバム『SunnyPsyOp』のジャケット画を担当して知名度を上げた。

バンド「ohGr」のセカンド・アルバム『SunnyPsyOp』のジャケット画。
バンド「ohGr」のセカンド・アルバム『SunnyPsyOp』のジャケット画。
雑誌「Juxtapoz」の表紙。
雑誌「Juxtapoz」の表紙。

地上で一番悲しい場所


2006年にガルシアは、『The Saddest Place on Earth,』(Last Gasp, 2006)、『The Magic Bottle: A BLAB! Storybook』(Fantagraphics, 2006)、『Tragic Kingdom 』(Last Gasp, 2007) の3冊の画集を出版する。

 

ファースト作品集のタイトル「The Saddest Place on Earth(地上でいちばん悲しい場所)」が、ディズニーランドのキャッチフレーズ「地上でいちばんハッピーな場所」のパロディであることが歴然としているように、彼女は幼少のころのディズニー体験が自身の作品に大きな影響を与えている。

 

ガルシアが子どものころは、まだ入園料も格安で、毎週のディズニーランド通いに夢中になった。しかし同時に、ガルシアはディズニーランドで働く若い友人たちの多くが日頃から、精神的なストレスや、ノイローゼを抱え、薬物乱用に溺れたり自殺していく姿などを見聞きする機会も多く、多感な思春期時代に「黒魔術の帝国」のイメージが植えつけられていったのだった。そのため彼女の絵画はディズニーチックであっても全体的にダークムードが漂っている。

『The Saddest Place on Earth,』(Last Gasp, 2006)
『The Saddest Place on Earth,』(Last Gasp, 2006)
『The Magic Bottle: A BLAB! Storybook』(Fantagraphics, 2006)
『The Magic Bottle: A BLAB! Storybook』(Fantagraphics, 2006)
『Tragic Kingdom 』(Last Gasp, 2007)
『Tragic Kingdom 』(Last Gasp, 2007)

不思議の国のアリス


ガルシアは2010年に「不思議の国のアリス」のイラストを描いている。「ジョン・ダニエルよるオリジナルバージョンは私のお気に入りのひとつです」とガルシアは言う。


「アリスは私が好きな話の1つですが実際は暗い話だと思います。アリスは穴に落ちた先は、彼女にとって素晴らしいと思えるキャラクターは一人もいると思えません。チュシャ猫にせよウサギにせよ彼女が遭遇する可愛らしいキャラクターのほとんどは、アリスにとってみれば全く可愛くはありません。再度読み返して私は、ダニエルのイラストよりも、少し暗い解釈を得て、イラストを描くことにしました。」

 

2013年11月2日に、ガルシアはロサンゼルスで開催された「Black Moon」という4人の女性ロウブロウ・アーティストに焦点を当てた展示に参加した。ほかには、ミュージシャンのジェシカ、画家のエリザベス・マクグレイス、そして画家でマーク・ライデンの妻でもあるマリオン・ペックである。

「Lewis Carroll,Camille Rose Garcia'sAlice's Adventures in Wonderland」(2010年)
「Lewis Carroll,Camille Rose Garcia'sAlice's Adventures in Wonderland」(2010年)

個展


2000 The Happiest Place on Earth - Merry Karnowsky Gallery
2001 The Soft Machine - Merry Karnowsky Gallery
2002 Retreat Syndrome - Merry Karnowsky Gallery
2003 Operation:Opticon - Merry Karnowsky Gallery
2004 Ultraviolence Land - Merry Karnowsky Gallery
2005 Plan B - Merry Karnowsky Gallery
2005 Dreamtime Escape Plan - Merry Karnowsky Gallery
2006 Subterranean Death Clash - Jonathan LeVine Gallery
2007 Doomcave Daydreams -Merry Karnowsky Gallery
2008 Ambien Somnambulants - Jonathan LeVine Gallery
2009 Down the Rabbit Hole - Merry Karnowsky Gallery
2010 The Hydra of Babylon - Merry Karnowsky Gallery
2011  Sneewittenhen und die Schwarze Lagune - Michael Kohn Gallery
2013 Down the Rabbit Hole - The Walt Disney Family Museum
2013 Black Moon - Sloan Fine Arts

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