【美術解説】カミラ・D・エリコ「不気味な生物と少女の不安」

カミラ・D・エリコ / Camilla d'Errico

少し不気味な生物と少女の不安


概要


生年月日 1980年9月30日
国籍 カナダ
表現媒体 絵画、イラストレーション、漫画
ムーブメント ポップシュルレアリスム
関連サイト https://camilladerrico.com/

カミラ・D・エリコはイタリア系カナダ人のマンガ家、イラストレーター、画家、美術家。ポップシュルレアリスト。現在、カナダのバンクーバーを基盤に活動をしている。

 

D・エリコは、「不安」という概念に関心を抱き、「不安」を形状化し、また色や質感を与えて具現化している。マンガに最も影響を受けた造形で、タコやイカなど海中生物を中心とした少し不気味な生物がまとわりついた少女のポートレイトが特徴。

 

アート活動基盤の中心は美術業界、およびマンガ業界。おおよそマンガ、イラストレーション、画業の3つで生計を立てているという。ただ、非常に多作なアーティストとしてよく知られており、最近では長編映画やビデオゲームなどのエンタテイメント企業とも仕事をしたり、ライセンス事業を通じて雑貨や家具関係の仕事もしている。その彼女の膨大な仕事履歴はレジュメを参照。

 

仲のよい同世代のポップシュルレアリストとして、オードリー・川崎エイミー・ソルがいる。D・エリコを含めてこの3人がヤング・ポップシュルレアリスト(1980年前後生まれ)の代表的なアーティストとみなされている。

略歴


D・エリコは、オンタリオ州のオタワで生まれた。両親はカナダに移住してきたイタリア出身の移民だった。子ども時代にD・エリコは土曜の朝に放送されるカートゥーン・アニメやマンガ、ファンタジックな要素の入った落描きに関心を持っていた。

 

キャピラノ大学に入学し、アドビ・フォトショップといったデジタル・アートの技術を学び、本格的に芸術活動を始める。また同時に、ドローイング、物語創作、マンガ創作なども独学で勉強をしていたという。

 

出勤して朝の9時から夕方の5時まで働く生活だけは嫌だったため、マンガ家になることを決意。1998年に毎年カリフォルニア州サンディエゴで開催されるアメリカ最大のコミケ『コミコン・インターナショナル』に初参加する。これ以降、本格的な創作活動を始める。

 

2001年にマンガを描きはじめる一方で、キャピラノ大学でイラスト&デザインの学部を卒業。その後、初めてプロとしてマンガの仕事を始めたのは、シアトル・ニューヨークを基盤としたマンガの出版社『Committed Comics』の『Threads』シリーズだった。

 

絵描きとしてのキャリアは2006年から。ギャスタウンにあるバンクーバーズ・エイデン・ギャラリーの展示が初めてとなる。2007年からD・エリコは、ロサンゼルス、ニューヨーク、サンフランシスコ、シカゴ、バンクーバーなどアメリカとカナダの両国をメインに絵描きとしての活動を積極的に始める。この頃からポップシュルレアリストとして認知されるようになった。

 

イメージ・コミックはD・エリコが描いた5冊のミニシリーズとグラフィック・ノベルを発行している。ミニシリーズは、ビデオゲーム『スカイパイレーツ・オブ・ネオ・テラ』のスピンオフ企画で、D・エリコのアートワークを基にしている。

 

また、作家のグラント・モリソンとは、彼のクリエーターが所有するプロジェクト「The New Bible」(以前の名前は「Warcop)で仕事をしている。

 

クライアントから仕事依頼に加えて、D・エリコははゲーテの「ファウスト」をベースにした自身のシリーズ「Tanpopo」を自費出版している。物語は、超人的な知性を持ちながらも感情を持たない少女タンポポを中心に展開する。感情、特に愛と幸福をひきかえに、うっかり悪魔と取引する。第2巻はサミュエル・テイラー・コリッジの『古代航海士のライム』、第3巻は『中国のアトリエからの奇妙な物語』にインスパイアされている。

 『tanpopo』
 『tanpopo』

■参考文献

https://en.wikipedia.org/wiki/Camilla_d%27Errico、2020年5月9日アクセス