【作品解説】マルセル・デュシャン「自転車の車輪」

自転車の車輪 / Bicycle Wheel

デュシャンの最初のレディ・メイド作品


マルセル・デュシャン「自転車の車輪」(1916-1917年)
マルセル・デュシャン「自転車の車輪」(1916-1917年)

概要


作者 マルセル・デュシャン
制作年 1913年
メディウム レディ・メイド(自転車の車輪、木製スツール、ネジなど)
サイズ 1.3 m x 64 cm x 42 cm
コレクション オリジナルは消失

《自転車の車輪》は1913年にマルセル・デュシャンによって制作されたレディ・メイド作品。自転車の前輪を取り外して、木製の台所用の椅子の上に逆さまにしてネジ留めし、立てかけている。

 

1913年にパリのスタジオにいるとき、なんとなく自転車の車輪を逆さまにして台に乗せて回して見ているときにこのアイデアを考えたという。当時は、特にレディ・メイドを意図して制作されたものではなく偶然できあがったもので、これが最初のレディ・メイド作品として知られるようになった。

 

タイヤを回すとスポークがぶれて、やがて目には見えなくなり、回転が遅くなるにつれてまた見えてくる車輪がデュシャンの気持ちをなごやかにしてくれたという。デュシャンはこのようにコメントしている。「車輪が回転しているのを見ると和やかな気分になった。それはまるで暖炉の火を眺めているときのように」

 

オリジナルの《自転車の車輪》をパリに残したまま、デュシャンは1915年にニューヨークに移る。そしてここでも「スタジオに一種の創造された雰囲気をかもしだす」ために、レプリカ「自転車の車輪」セカンドバージョンを制作。この頃に「レディ・メイド」という言葉も思いついたという。

 

また《自転車の車輪》は最初のキネティック・アートともみなされている。

 

1913年に制作オリジナル版は消失、セカンドバージョンも紛失している。1951年にレプリカ版が制作されており、ニューヨーク近代美術館に所蔵されている。


■参考文献

MoMA | Marcel Duchamp. Bicycle Wheel. New York, 1951 (third version, after lost original of 1913) 

Bicycle Wheel - Wikipedia 

・マルセル・デュシャン展 高輪美術館、西武美術館