バンクシーはパレスチナで幅広く活動しています。2000年代初め、彼の作品はパレスチナとイスラエルを隔てる700km以上の壁であるヨルダン川西岸の壁を含むこの地域で目撃されはじめました。さらに、ベツレヘムにあるイスラエルの分離壁の隣にホテルを所有しています。ガザに関する彼の発言と、この地域における彼の作品を見てみましょう。
ヨルダン川西岸
『花束を投げる人』、または『愛は空中に』『爆弾愛』は、2003年にヨルダン川西岸のベイトサフールに描かれたステンシル作品です。
これはバンクシーの最も有名な作品の1つであり、ストリートアートの代表作として知られています。
この作品が登場した2003年は、パレスチナとイスラエルを分けるための分離壁が建設された年でした。分離壁は全長760kmにも及び、最初の『花を投げる人』はその分離壁の壁に描かれました。バンクシーはこの分離壁について次のように述べています。
「この分離壁のせいで、パレスチナは世界最大の野外刑務所になった。」
ガザ
バンクシーのイスラエル・パレスチナの紛争に関する最も力強い声明の一つは、おそらく2015年の彼のビデオです。
観光企画と皮肉を込めて提示されたもので、人々をガザを訪れるよう招待する内容です。そのキャプションには「新しい目的地を発見する今年を迎えましょう... ガザへようこそ」とあります。
その映像では、荒廃したガザの建物が記録され、テキストには「地元の人々はとても気に入っているので決して出て行かない」とあり、「出ることを許されていないから」とも追記されています。
イスラエル軍のシーンに切り替わると、バンクシーは占領に関する事実を視聴者に共有します。それは「独占的な状況」であり、「三方を壁で囲まれ、他方は軍艦の列で見守られている」と語ります。そして「友好的な隣人に見守られている」と追記しています。
バンクシーは視聴者に、2014年の「プロテクティブ・エッジ作戦（イスラエルによる軍事作戦）」で「18,000軒の家が破壊された」と伝え、今ではよく議論される「違法なトンネルのネットワーク」にも触れています。
バンクシーのガザ地区で制作した絵画の1つでピンクのリボンを付けた猫について、パレスチナ人男性が次のようにコメントしています。
「この猫は自分の人生で喜びを見つけられないことを世界に伝えている。猫は何か遊ぶものを見つけた。我々の子供たちはどうなのか？」
バンクシーは子猫の絵についてウェブサイトで意図を説明しています。
「地元の人が来て「これはどういう意味だ？」と聞いてきた。私はこう答えた。インターネットの人々は破壊されたガザの廃墟は置き去りにして、子猫の写真ばかりを見ている。だから自分のサイトで悲惨なガザ地区の現状と対照的な陽気な子猫の絵を描き、そのギャップでガザ地区の現状を伝えたかった。」
ビデオの終わりは壁にスプレーされた引用文で、次のようになっています。「強い者と弱い者の間の紛争から手を引いてしまうと、私たちは強い者側につくことになる — 中立でいることはできないのです。」
ベツレヘムの景色のないホテル
2017年3月、バンクシーはInstagramで自身のホスピタリティ事業である「ウォールド・オフ・ホテル」を発表しました。
このホテルはヨルダン川西岸の壁に隣接しており、「エルサレムへの検問所から500メートル、ベツレヘムの中心から1マイル」に位置しています。
このホテルは、バンクシーやSami Musa、Dominique Petrinなどのアーティストによって制作された「景色の良い部屋」や大統領スイートを含む「カスタマイズされた」客室、そしてイスラエル軍の施設からの余剰品で装備された予算の宿泊施設を誇っています。
敷地内のギャラリーでは、パレスチナのアーティストの作品が展示されており、博物館では地域のアニメーション歴史、軍事関連の映像、オスカーにノミネートされたドキュメンタリー映画「5本の壊れたカメラ」からの抜粋が音声と映像で紹介されています。
また、このドキュメンタリーに使用されたカメラの1台も展示されています。そして、ギフトショップではバンクシーのグッズが販売されています。
また、この高級ホテルはTripAdvisorで5つ星の評価を誇り、その中でバンクシーの作品も特筆されています。例えば、イスラエルの兵士とパレスチナの若者の枕投げを描いた壁全体に羽が描かれたり、ポーターとして着飾った猿、そして大統領スイートに描かれたチーターなどがあります。
このホテルにかつて設置されていたアーティストの三連画「地中海の眺め」は、2020年のサザビーズのオークションで223万ポンドで売却され、その収益はベツレヘムのNGOに寄付されました。
2023年10月12日の投稿で、ホテルのウェブサイトは、地域での重要な出来事により、当分の間閉鎖されることを残念に思っていることを伝えています。
■参考文献
・https://indianexpress.com/article/explained/explained-culture/banksy-artwork-in-palestine-8989505/、2023年10月31日アクセス