【美術用語解説】オートマティスム「理性の介入なしに言葉を綴る」

自動記述 / Automatism

無意識下にある精神を解放


概要


自動記述は、理性の介入なしで言葉を綴っていく記述方式で、無意識下に抑圧されている精神を解放することを目的としている。

 

アンドレ・ブルトンが、第一次世界大戦に従軍時に病院で見た精神分析治療とダダイスムの言語破壊をヒントにして生み出した表現方法。1919年にブルトンとフィリップ・スーポーが「文学」誌上にて公開実験作品「磁場」を披露。1933年にブルトンが出版した「オートマティック・メッセージ」が自動記述に関する重要な理論書とみなされている。

 

自動記述のやり方は、書く内容をまったく考えずに、ただ思いついたことを次々に書いてゆくのが基本となる。徐々にスピードを上げて書けば書くほど、理性的な介入がなくなり、オートマティスムの効果は高まるという。

 

オートマティスムを進めていくと、まず文章の主語「私」がなくなり、次に過去形がなくなり現在形が多くなる。動詞は原形になり、名詞のように扱われるようになる。最終的には、名詞と動詞の原型と形容詞だけの世界となり、言葉の前後のつながりが消失し、それはまるでオブジェの陳列の世界になるという。

 

このようなモノとモノ、概念や概念のつながりが消失していくと、無意識下に抑圧された精神は分かるようになるが、ほとんど狂気の状態になるという。日常生活に支障をきたすようになり、目の前には幻覚が生じ始めるといわれる。

 

ポイントは、「普通の記述」と「自動記述」は段階的に連続していることである。普通の記述のスピードを上げていくことによって自動記述になり、無秩序で異常な世界が生まれる。この普通と異常の世界の連続性がシュルレアリスムの重要な部分である。現実とは全く別にある幻想世界やファンタジーの世界ではなく、現実の延長にある異常な世界がシュルレアリスム(超現実)である。(参考文献:シュルレアリスムとは何か 巌谷國士)

 

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