【作品解説】ヤン・ファン・エイク「アルノルフィーニ夫妻像」

アルノルフィーニ夫妻像 / Arnolfini Portrait

庶民の結婚記念を初めて記録した絵画


《アルノルフィーニ夫妻像》,1434年
《アルノルフィーニ夫妻像》,1434年

作者 ヤン・ファン・エイク
制作年 1434年 
表現媒体 オーク材に油彩、縦板3枚のパネル
サイズ

82.2 cm × 60 cm (32.4 in × 23.6 in)

panel 84.5 cm × 62.5 cm (33.3 in × 24.6 in)

所蔵者

ロンドン、ナショナル・ギャラリー

《アルノルフィーニの肖像》は、1434年にオランダの画家ヤン・ファン・エイクによって制作された油彩画。オーク材のパネルに描かれている。

 

イタリアの商人ジョヴァンニ・ディ・ニコラオ・アルノルフィーニと彼の妻を描写したと考えられている全身二重肖像画である。おそらく、フランドル地方の都市ブルージュにある2人の住居内の様子を描いたものとされている。

 

その美しさ、複雑な図像、幾何学的な直交的遠近法、鏡を用いた絵画空間の拡大などから、西洋美術の中でも最も独創的で複雑な絵画の一つとみなされている。

 

エルンスト・ゴンブリヒによれば、「イタリアのドナテッロやマサッチョの作品と同じくらい新しく、革命的なものだった。現実世界のシンプルな一角が突然、魔法のようにパネルに固定されていた... 歴史上初めて、芸術家は真の意味での完璧な目撃者となった」という。

 

この肖像画は、エルヴィン・パノフスキーをはじめとする一部の美術史家によって、庶民の結婚記念を初めて記録した絵画と考えられている。

 

ファン・エイクによる署名と1434年の日付が付けられたこの作品は、《ヘント祭壇画》とともに、テンペラではなく油彩で描かれた最も古い有名なパネル画としても評価されている。

 

本作品は1842年にロンドンのナショナル・ギャラリーが購入した。

 

ファン・エイクは、薄い半透明のつやを何層にも重ね塗るりをして、階調と色彩の両方の強度を持った絵を描いた。輝く色彩はリアリズムを際立たせ、アルノルフィーニ夫妻の物質的な豊かさを示すにも役立っている。

 

ファン・エイクは、テンペラに比べ油絵具の乾燥時間が長いことを利用して、濡れた状態で描くことで色をブレンドし、光と影の微妙な変化を実現し、立体的なフォルムの錯覚を高めた。

 

アッラ・プリマとしても知られるウェット・イン・ウェット(ウェット・オン・ウェット)技法は、ヤン・ファン・エイクをはじめとするルネサンス期の画家たちの多くが利用している。

 

油絵具という媒体は、ファン・エイクが表面の外観を捉え、テクスチャーを正確に区別することを可能にした。

 

また、左の窓から入ってくる光をさまざまな面で反射させ、直射光と拡散光の両方の効果を表現している。

 

鏡の横にぶら下がっている琥珀色のビーズ1つ1つがハイライトのような詳細に描画されているが、これは虫眼鏡を使って描いたといわれている。

 

細部の描写もさることながら、特に光を使って室内の空間を再現し、「部屋とそこに住む人々を説得力のある形で描写している」という点で、当時としては注目に値するものだった。

 

シーンや細部にどんな意味が込められているのか、これについては多くの議論がなされてきた。クレイグ・ハービソンによると、この絵は「画家と同時代を生きた庶民が当時のインテリアのもと、ある種の行事を行っているこを示した唯一現存しているの15世紀の北方パネルである」という。


■参考文献

https://en.wikipedia.org/wiki/Arnolfini_Portrait、2020年8月27日アクセス