専門家のパネル / A Panel of Experts
恋人のキャットファイトを描いた作品
概要
作者 | ジャン=ミシェル・バスキア |
制作年 | 1982年 |
メディウム | キャンバスにアクリル、オイルスティック |
ムーブメント | 新表現主義 |
サイズ | 150 cm × 150 cm |
所蔵者 | モントリオール美術館 |
《専門家のパネル》は、1982年にジャン=ミシェル・バスキアが制作した絵画。
作品の一部(左上の二人の拳闘)は、バスキアの恋人であるスザンヌ・マルークやマドンナ間のキャットファイトを描写したもので、バスキアの個人的な生活の特定のイベントを題材にしている。
この作品は、グラフィティ・アートだけでなく、ポップカルチャーへの言及や古典絵画におけるシンボルに関するバスキアの優れた知識が含まれている。
1982年11月にニューヨークのファン・ギャラリーで開催されたバスキアの個展のために制作され展示された。現在はモントリオール美術館の主要コレクションとなっている。
背景
1981年、バスキアは、イースト・ヴィレッジのバー「ナイト・バーズ」で知り合ったウェイトレス、スザンヌ・マルークと交際を始める。彼女と同棲し、彼女が家賃を負担する一方で、彼は絵を描くことに専念した。
同年、バスキアはストリート・アーティストからギャラリーでの作品展示に移行して、ファイン・アーティストとしてデビュー。翌1982年、二人はソーホーのギャラリスト、アニーナ・ノセイに提供してもらったロフトへ移る。マルークとの交際は1983年まで続いた。
また、1982年にバスキアは、デビューアルバム「マドンナ」を制作中の新進気鋭の歌手、マドンナとも交際を始める。
デビューシングル「Everybody」のミュージックビデオを監督したエド・スタインバーグによれば、マドンナがナイトクラブ「ラッキー・ストライク」でバスキアを見つけると、スタインバーグが自身の家で二人に会わせるよう手はずを整えたという。
一方、バスキアの元グレイのバンドメンバーであるニック・テイラーは、ボウラーの「レトロ・ナイト」で二人を紹介したと述べている。バスキアとマドンナは1983年まで交際していた。
ある夜、チェルシーのナイトクラブ「ロキシー」にいた二人を見つけたマルークは、嫉妬に駆られてマドンナに殴りつけ、さらに、マルークはバスキアの絵をクロスビー・ストリートにあるロフトの外で燃やした。
分析
《専門家のパネル》は、枠張りキャンバスに描かれている。このキャンバスは、四隅の支柱が露出した木片を麻ひもで縛ったハンドメイドの構造となっている。
バスキアは鑑賞者の視線がテキストとイメージに自然に集まるよう、白と黒の強いコントラストを意識して絵を構成している。
左上には「VENUS」と書かれ、その下には「MADONNA©」を打ち消すように書かれている。バスキアは絵の中でスザンヌ・マルークを「ヴィーナス」と呼んでいた。打ち消し線についてバスキアは「言葉を消すことで、よりその言葉に注目してもらう。見えなくなっているからこそ、人は見たくなるのです」と言う。
なお、マドンナの名前の横に著作権マークが付いているのは、彼女の社会的な名声が間近に迫っていることを認識していたからだという。
一方、マリークによれば、バスキアはマリークマドンナとの戦いに勝ったからマドンナの名前を消したのだと話しており、また、バスキアは「プエルトリコの女の子のようにマドンナを殴った」と話してたという。
マドンナは、2017年にロンドンのバービカン・センターで開催された「Basquiat』展の展示を訪れ、この前で記念撮影をしている。
バスキアは子供のころ、漫画家になりたいと思っていた。この作品では、漫画的なイメージを取り入れている。
戦いの下にはスーパーマンのような人物がいて、「KRAK」という言葉が添えられているが、これは擬音効果が特徴の漫画の演出に影響を受けているという。
絵の右上には「SATURDAY MORNING CARTOON」の文字。下部には、「SUGAR COATED CORN PUFFS」、「MILK」、「SUGAR」など、サタデーモーニング・カートゥーンに関連する文字が書かれている。
また、バスキアの初期の作品に頻繁に登場する王冠のモチーフも2回描かれている。
展示
《専門家のパネル》は、1982年11月にニューヨークのファン・ギャラリーで開催されたバスキアの個展のために制作された。
現在、モントリオール美術館の主要コレクションになっている。2016年にはバンクーバー・アート・ギャラリーで「MashUp:The Birth of Modern Culture」展の一部として展示された。
2017年9月から2018年1月まで、ロンドンのバービカン・センターで開催された『バスキア:Boom for Real』展の一部として展示された。
■参考文献
・https://en.wikipedia.org/wiki/A_Panel_of_Experts、2021年12月5日アクセス