【美術解説】ゆめにっき「夢の中を旅するシュルレアリスティックRPG」

ゆめにっき / Yumenikki

夢の中を旅するシュルレアリスティックRPG


概要


「ゆめにっき」は、日本のインディーズ・プログラマーききやまによるフリーのPC用ゲーム。RPGツクール2003製。2004年に最初のバージョンが公開され、以後何度かアップデートを経て、2007年10月が最終バージョンとなっている。

 

「窓付き」という名前のひきこもりの主人公の少女が見る夢の世界を冒険するというRPGで、そのシュルレアリスティックでホラー要素の強い独特なビジュアル観が国内外で話題を呼んだ。『MOTHER』シリーズやPSゲーム「LSD」をミックスさせたような世界観となっている。

 

もともとは、日本の匿名掲示板「2ちゃんねる」から有名になっていったゲームで、その後、日本国外でもじわじわと注目を集めるようになった。ファンが作った非公式の英語版「ゆめにっき」も存在する。ゆめにっきはソフトダウンロードサイト「ベクター」の2010年度ダウンロードランキングで14位にランクイン。前年の2009年度では68位にランクインしている。全体ではこれまで10万回以上ダウンロードされている。

ゲーム内容


ひきこもり少女の夢


 プレイヤーは、アパートに住んでいる「窓付き」という名前の引きこもりの少女を操作することになる。

 

アパートの部屋にはバルコニーがあり、部屋とバルコニー間は自由に出入りすることができる。しかし、部屋から廊下側のドアを開こうとすると、窓付きは首を横に振り、開くことをかたくなに拒否する。この点からみてもひきこもりのように思える。

 

部屋における彼女の唯一のエンタテイメント要素といえば、『NASU』というファミコンのようなゲームと、電波試験放送しか映らないTVだけである。ゲームはできるがTVは映らない理由は、おそらく窓付きが世俗に対して無関心であるからだろう。

 

机の上には夢日記が置いてあり、プレイヤーはこれでデータをセーブすることができる。部屋に備え付けられたベッドで眠りに就くと、夢の世界の自分の部屋に切り替わりる。この夢の世界で窓付きは、現実の世界では決して開こうとしなかった扉を積極的に開く。そして扉の先にはシュルレアリスティックな異界が出現する。

 

なお夢の中の部屋では、現実世界に存在したゲーム機が消失している。これは夢の世界では、夢の世界そのものがゲームであるため、窓付きの心の中ではゲーム機を必要としないためであろう。

 

部屋を出るとそこには12の扉があり、各扉を開くとおのおのの非現実的な世界へとつながる。目が痛くなるような原色の強いカラフルな空間、森、数字のシンボルが並んだ世界、不気味な生物、身体の部位が詰まった世界を旅することになる。なお、これらの12の世界はほかの世界とつながっており、全体として1つの巨大で広大な世界を形成している。

 

ゲームの目的は、広大な夢の世界を旅をして24個のオブジェクト(エフェクト)を入手することである。エフェクトの大半は使用しても、特にこれと言った使いみちのようなものはなく、

 

夢から脱出するには、窓付きの頬をつねり目を覚ますだけ。この動作で簡単に夢の世界から脱出して現実のアパートの部屋に戻り、セーブ作業をすることができる。エンディングでは、主人公がベランダから飛び降りて自殺する。

海外の反応


中国のゲーマーたちが集うコミュニケーションサイト「Baidu Tieba」や台湾のアニメ・漫画・ゲームファンたちが集う「Kimica」などでも話題になり、中華圏でも広まっていった。

 

ゲーム批評家のルイス・デンビーは、「本気で不安感におそわれるゲームだ。これまで出会ったどんなゲームキャラよりも窓付きというキャラの存在感は強烈だ。」とコメントしている。

 

ゲームデザイナーのデレック・ユーはこのゲームを大変気に入り、『MOTHER2 ギーグの逆襲』とよく似たビジュアル要素を比較しつつ「対話のまったくない単純な行動が強烈な恐怖感を与える」と評している。