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【作品解説】バルテュス「夢見るテレーズ」

夢見るテレーズ / Thérèse dreaming

横向きの少女は何を夢見るか?


※1:バルテュス《夢見るテレーズ》(1938年)
※1:バルテュス《夢見るテレーズ》(1938年)

概要


作者 バルテュス
制作年 1938年
メディウム キャンバスに油彩
サイズ 149.9 × 129.5 cm
所蔵先 メトロポリタン美術館

《夢見るテレーズ》は1938年にバルテュスによって制作されて油彩作品。作品のモデルはパリで隣に住んでいた失業者の娘テレーズ・ブランシャールで、バルテュスの最初の少女モデルである。それまでの女性モデルは見かけはほぼ成人女性だった。

 

テレーズ・ブランシャールは、この作品のタイトルが示すように、周囲に気を配らず、物思いにふけっているように見える。

 

この作品を描いたとき、ブランシャールは12歳か13歳くらいであった。バルテュスは、無数の近代芸術家たちと同様に、子どもという対象が社会の期待にまだ型にはめられていない生の精神の源であると信じていた。

 

ポール・ゴーギャン、エドヴァルド・ムンク、パブロ・ピカソなど、20世紀初頭の前衛芸術家の多くも、思春期の性愛を、心理的脆弱性と抑制の欠如の強力な場として捉え、こうした主観的な解釈を作品に投影しているのだ。

 

バルテュスにとってテレーズは、第二次世界大戦の足音が迫り来る暗い世相を反映したような憂鬱な雰囲気があり、それがバルテュスを惹きつけたという。

 

「夢見るテレーズ」というタイトルのとおり、目を閉じて夢の世界に没入しているような横顔のテレーズが描かれている。しかし、左膝を立てて座り、スカートの下を無防備にさらしだす。

 

そして問題は股の直下にいるである。は美味しそうにミルクをすすっているが、おそらくミルクをすする行為は直上にある股と結びついている。また猫はバルテュス自身を表すモチーフである。

 

ヘタウマと非難されがちで絵も前衛的でもなく新鮮味にかけながらも、バルテュスを最もよく理解して高い評価をしていたのはパブロ・ピカソである。ピカソは「僕とバルテュスは、同じメダルの表と裏だ」と語っている。なお1938年当時、ピカソの愛人の名前はマリー・テレーズだった。

 

この後、彼女は少なくとも9つのバルテュスの作品に登場し、一人で、あるいは猫や兄弟と一緒に描かれている。

 

※2:若きバルテュスと巨匠ピカソ
※2:若きバルテュスと巨匠ピカソ

■参考文献

・バルテュス展図録 東京都美術館

https://www.metmuseum.org/art/collection/search/489977、2023年1月18日アクセス

 

■画像引用

※1:https://www.wikiart.org/en/balthus/th%C3%A9r%C3%A8se-dreaming-1938

※2:http://www.fonds-balthus.com/en/lhomme.php

パブロ・ピカソ「夢」
パブロ・ピカソ「夢」
パブロ・ピカソ「鏡の前の少女」
パブロ・ピカソ「鏡の前の少女」