ガブリエル・オロスコ展「内なる複数のサイクル」
東京都現代美術館
本展の見どころ
2015年1月24日(土)から5月10日(日)まで東京都現代美術館で、現代美術を代表するアーティストの一人であるガブリエル・オロスコの展覧会が開催されている。
これまでアジア圏ではあまり展示の機会がなく、今回は待望の日本の初個展。そのため90年代から現在のオロスコの最新のキャンバス作品までが展示され、回顧展的であり、初心者にもやさしい構成となっている。
真ん中に池がある奇妙なピンボンテーブルで、実際に、卓球をして遊ぶことができる。写真も取り放題だ。
赤・青・白・黄!2マス!厳格なルール
ペインティングでは円を使った抽象画がオロスコ作品の特徴である。
といっても草間さんのように一心不乱に円を描くだけではなく、オロスコは規則正しく、頭を使い、厳格な法則に従って円を描いていく。
本作「サムライ・ツリー」は、赤・青・白・金の4色を斜め2マス先に進めるというチェスのナイトの法則に従い、配色していく。モンドリアンの遺伝子、そしてサムライ(ナイト)の遺伝子を受け継ぐダンディスム作品である。
レディ・メイドと抽象
また、オロスコの基本的な表現手法は、マルセル・デュシャンの伝統を受け継ぐレディ・メイド、および修正レディ・メイドである。
「レディ・メイド」は、何らかを「選択」して「アート」として提示したオブジェ作品のことである。デュシャン自転車の車輪や男性用便器にオブジェ的な美を発見し、それをアートとして提示した。
オロスコもまた、路上に打ち捨てられた物や何気ない風景の中から「美」を発見して、それをそのまま「アート」として、または少しオブジェに手を加えて「アート」として提示する。たとえば、今回の展覧会では、「どん兵衛」のカップがそのまま壁にかけられている。
この作品を日本人が見ると間違いなく誰もアートと思わない。ただのどん兵衛である。しかし、オロスコは日本語が読めない。日本語が読めない外国人にとってはこのカップ麺のデザインは抽象絵画に見えてしまうこともある。ここに、抽象美術を発見したのである。これがレデ・メイドである。つまり、作る芸術ではなく「発見の美術」「選択の美術」なのである。オロスコの基本はこの方法である。
ほかに展示されている、オロスコの写真、ブーメラン、トイレットペーパーを付けたベンチレーター、領収証や航空券などもレディ・メイド作品である。
モンドリアンとデュシャンの遺伝子を受け継ぐ、アメリカン・アートの申し子といってもいいガブリエル・オロスコ。日本人には最も受け付けなさそうな有名現代アーティストの一人のような気がするが、今後、日本での個展はほとんどない気がするので、ぜひとも行ってみてほしい。私ももう一回はいきます。