【美術解説】デカダン「根深い猜疑心と悲観主義」

デカダン / décadent

根深い猜疑心と悲観主義


概要


デカダンは、19世紀の西ヨーロッパの美術および文学で発生したムーブメントである。フランスを中心にイギリスやヨーロッパ全域、さらにアメリカにもムーブメントは広まった。ただし実際には「ムーブメント(運動)」というよりは「雰囲気」であったといわれる。

 

「デカダンス」は、18世紀末の初期ロマン主義のナイーブな表現を行う何人かの19世紀後半の作家に対して、敵対する批評家たちが名づけた言葉である。デカダン・ムーブメントの芸術家の大部分は、エドガー・アラン・ポーの詩や小説といったゴシック小説から影響を受けており、また象徴主義耽美主義ダンディスムとも関わりが深く、これらをすべて含めて「世紀末芸術」ということもある。

 

デカダンスの概念は18世紀、特にモンテスキューにまでにさかのぼり、またデジレ・ニザールがヴィクトル・ユーゴーやロマン主義に批判的に使っていたときから、一般的に侮蔑的な言葉として批評家たちに使われていた。。逆に、テオフィル・ゴーティエやシャルル・ボードレールといったロマン主義後期の世代は、この「デカダンス」という言葉を、誇りの象徴、あるいは陳腐な「進歩主義」とみなしていたものへ反発の現れとして用いた。1880年代には、フランス文学のある集団が自分たちを「デカダンス」と規定した。

 

 

デカダン派の特徴は、根深い猜疑心悲観主義保守主義である。彼らは楽観論者や進歩主義に対して疑問の目を向け、自分たちの時代が退潮するとは思わなかった。「古き良き」思想である。しかし一方で彼ら自身が矛盾するように衰退感を感じており、底ごもり、中世の優雅な世界観に対するノスタルジアを抱いていた。彼らは悲観主義や女性嫌悪倦怠にひかれていった。