【美術解説】ジョン・ケージ「4分33秒」

ジョン・ケージ / John Cage

演奏をしない前衛ミュージシャン


概要


ジョン・ミルトン・ケージ・ジュニア(1912年9月5日-1992年8月12日)はアメリカの作曲家、音楽理論家、作家、芸術家。通称ジョン・ケージ。不確定性の音楽、電気音響音楽、偶然性の音楽、拡張楽器のパイオニアで、戦後の前衛芸術の代表的な人物の一人。

 

1942年にシュルレアリストの巨匠ことマックス・エルンストに評価されニューヨークで現代美術と関わりををもつようになる。批評家はケージを20世紀の最も影響力のあるアメリカの作曲家として評価。

 

また生涯におけるロマンチック・パートナーである振付師のマース・カニングハムを通じて、ケージはまたモダン・ダンスの発展においても重要な役割を果たしている。

 

ケージの作品は恐らく1952年に制作した「4分33秒」が最も有名である。その作品は「無音の音楽」というコンセプトの下、タイトルの4分33秒の間、ケージはピアノの前に座っただけで全く演奏しなかった。

 

ケージによれば、4分33秒間の“無音”を聴くのではなく、4分33秒間の静寂な環境となった演奏会場で聴こえる、人の呼吸や級長など、普段は全く意識しない音に心を向けさせることを意図したものだという。すると雑音は音楽になり、また演奏者ではなく聴き手を主人公とした。音楽は音を鳴らすものという常識を覆す「無音の」音楽である。

偶然


1945年からの2年間、ケージはコロンビア大学で鈴木大拙に禅を2年間学び、東洋思想への関心も深める。すべての偶然をあるがまま受け入れる禅の思想から、ケージは「自分では音を選ばず、うかがいを立てる」手法を導き出す。

 

コインを投げて音を決め、星座に音符を重ねる。それは、おのずと遊びの精神へと連なってゆく。のちに菌類学者になったのも、辞典で「music(音楽)」のすぐ前にあったのが「mushroom(キノコ)」だったから。この偶然性による芸術はダダイストやシュルレアリストも好んだ手法だった。