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はじめての村上隆入門「知っておきたい11の事」

村上隆について知っておくべきことこと

村上隆は現代美術でどのように評価されているのか


日本を代表する現代美術家、村上隆(1962年生まれ)の作品は、絵画、彫刻、版画から、2013年に公開された長編映画『めめめのくらげ』まで、多岐にわたっているが、それに加えて多くの商業芸術も手がけている。


01.村上隆のセレブファンにはカニエ・ウェストがいる


村上隆には多くのコレクターがいるが、最も影響力のあるコレクターはラッパーのカニエ・ウエストだとみなされている。彼とは何度も仕事をしている。例えば、2008年に公開されたカニエ・ウエストの曲『Good Morning』のミュージックビデオでは、村上が監督を務めた。「彼のことが大好きです。彼は超強烈な(パワフルな)オーラを放っています」とウエストは話す。

02.村上隆のアートは、アニメやマンガに影響を受けている


村上のアートワークは視覚的に過剰である。長年にわたり、彼は独特の美的世界を構築してきた。飴色の色彩、見境いのないディテール、DOBやミス・ko2のようなエキセントリックな繰り返し登場するキャラクターが特徴である。

 

これらのキャラクターや色彩は、日本のアニメや漫画などの形態に影響されており、これまでのポップ・アートの文脈に独自のサイケデリック・カルチャーな要素がミックスされている。

 

村上のサイケデリックのイメージは、ときに幻覚的とも言われる。しかし、彼は「私は実際に薬をやってないし、経験もない」と話している。

 

西洋人はドーパミン(快楽に関連するホルモン)を分泌させるために薬物を必要とするが、日本のサイケデリックのイメージはビデオゲームの影響だと言う。

03.村上は19世紀の絵画技法である日本画


村上は、東京で生まれ育ち、現在も東京に住んでいる。東京藝術大学で日本画を専攻し、博士号を取得した。アート作品販売やアーティストのマネジメントを行う会社「カイカイキキ」を経営しており、東京、埼玉、京都にオフィスをかまえている。

 

1994年、P.S.1コンテンポラリー・アート・センター(現MoMA PS1)のインターナショナル・スタジオ・プログラムに参加するためにニューヨークに滞在するが、これが世界の現代美術家に成長する大きな転機となった。

 

興味深いことに、村上の作品が西洋の模倣だったものが明らかに日本的なものになったのは、一時的に日本を離れたこのときだった。

04.村上隆の最も代表的なキャラクターはDOBである


P.S.1で、村上の最も魅力的なキャラクターである「DOB」を膨らませたものを発表した。DOBは、ソニック・ザ・ヘッジホッグ、ドラえもん、日本の民間伝承の妖怪など、さまざまな影響を受けて創作されたキャラクターである。

 

DOBは長年にわたり、絵画や彫刻、さらにはぬいぐるみなど、さまざまな形態で作られてきた。一目でわかるDOBは、村上氏にとってブランドのマスコット的存在であり、ほとんど分身のような存在である。

オークションで落札された村上作品の中で、最も高額な10作品のうち4作品はDOBが描れたものである。

05.村上隆の作品には「かわいい」が詰まっている


村上隆のアートは、日本のさまざまな概念を欧米の人々に理解してもらうのに一役買っている。そのひとつ、「かわいい」は、ハローキティに代表されるような「かわいい」という意味と同じである。笑顔の花や元気なキノコなど、村上作品には「かわいい」という日本の精神が込められている。

06.村上隆は「ミス・ko2」を通して「オタク」であると公言している


「かわいい」と並んで村上の活動の核となるもう一つの概念は「オタク」である。

 

「オタク」とは、漫画やコンピュータの画面に釘付けになっている若い男性を中心とした日本のサブカルチャーの形態のひとつ。彼らは、外に出るよりも家にいることを好み、現実の女性よりも、二次元の架空の女性を極度の性的ファンタジーの対象として見なす傾向がある。

 

そのため、ミス・ko2はオタクの文脈の中で解釈する必要がある。1996年に登場した、大きな胸を持つ金髪のウェイトレスは、ミニスカートとピンヒールを身にまとい、数多くの彫刻や絵画、そして映画『ジェリーフィッシュ・アイズ』に登場している。

 

オークションで落札された村上作品の中で、最も高額な10作品のうち3作品がko2嬢を描いたものである。

 

また、このキャラクターの3Dフィギュア版を制作しており、アニメ風彫刻の原型となった。その意味で、この絵にはその後の村上のキャリアの基礎が詰まっている

07.自慰する男性の作品「世界で最も影響力のある100人」に


なお、村上作品の中で最も高額なのは、グラスファイバー製の彫刻作品「My Lonesome Cowboy」で、これはオタクの趣味であるマスターベーションをしている男性を描いたものである。

 

この作品は2008年に1520万ドルで落札されたが、同年、村上はこの自慰作品をきっかけに『タイム』誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた。

08.世界各地で回顧展が開催されている村上隆


2007年にロサンゼルスの現代美術館で開催された「©Murakami」(後にブルックリン美術館、フランクフルト近代美術館、グッゲンハイムビルバオに巡回)をはじめ、多くの国際的な回顧展が開催されている。

 

もうひとつは、2017年にシカゴ現代美術館で開催された「Takashi Murakami: The Octopus Eats Its Own Leg」(その後、バンクーバー・アート・ギャラリー、フォートワース近代美術館に巡回)である。

 

2010年には、現代アーティストとしては3人目となるヴェルサイユ宮殿での個展を開催したことで話題となった。

09.ルイ・ヴィトンやユニクロなどのブランドとコラボレーション


しかし、彼の魅力はアートの世界をはるかに超えたところにある。オフホワイト、ユニクロ、そして最も有名なルイ・ヴィトンなどのファッションブランドと提携し、10年以上にわたってハンドバッグをデザインしてきた。

 

また、彼のInstagramのページをスクロールすると、彼がいかに多くのセレブリティに慕われているかがわかる。彼のコレクターには、ジャスティン・ビーバー、ナオミ・キャンベル、レオナルド・ディカプリオなどがいる。

10.「スーパーフラット」理論で美術専門家から高い評価


ファッション業界や著名人からの支持にくわえて、村上は2000年に今では有名な「スーパーフラット」理論を初めて発表し、ファインアートの批評家からの高い評価を得た。

 

2001年1月から3月にかけて村上は、ロサンゼルス現代美術館による19人の企画のグループ展『スーパーフラット』を企画・開催。同タイトルのカタログ上で村上は『スーパーフラット』理論を掲載。この展示は2000年に渋谷パルコギャラリーで開催した『スーパーフラット』の展示を基にしている。

 

スーパーフラット理論の核は、今日の日本のマンガやアニメにおける平面性は日本の美術における平面表現の延長にあるものだというもの。さらに、スーパーフラットは戦後日本の無階級社会や一様で均質的なポップカルチャーを現すものでもあるという。

 

村上の作品は、江戸時代の偉大な浮世絵にまで遡る日本のイメージを引き継いでいる。その理由は主に2つある。まず、日本人は西洋人と違って、伝統的にファインアートとコマーシャルアートの区別がないこと、次に、同じく西洋人と違って、日本人には直線的な遠近法の伝統がないことである。

 

このスーパーフラット理論は、村上作品における芸術理論の核であり、2002年のパリ、カルティエファウンデーションでの『ぬりえ』展、2005年のニューヨーク、ジャパンソサエティでの『リトルボーイ』展をはじめ、その後の展示において、さらに深く探求する中心的概念となった。

 

『スーパーフラット』展は、2001年7から10月にウォーカー・アート・センター(ミネアポリス)、11月から2002年3月にヘンリーアートギャラリー(シアトル)に巡回。また、これらの展示では、日本のあまり知られていない文化を海外に紹介することにも貢献した。

11.2011年の東日本大震災を受けてスピリチュアル要素が取り入れられる


しかし、最も注目すべき変化は、過去10年間に村上が、日本の宗教的(特に仏教)から影響を受け、よりスピリチュアルな要素が作品に見られるようになったことだろう。そのきっかけとなったのは、16,000人の犠牲者を出した2011年の東日本大震災である。

 

この出来事のあと、「私の哲学は完全に変わりました」と彼は言う。今では、信仰やスピリチュアルがいかに人々が自然やほかの場所からの課題に対処する手段であったかを尊重しているという。

 

彼のスピリチュアルや宗教的要素に対する先見性は、現在のビッグテックがぶつかっている過激派は保守勢力の問題を解決する糸口になるだろう。