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【作品解説】ミケランジェロ「ピエタ」像

ピエタ像 / Pietà

ミケランジェロを有名にした出世作


ミケランジェロ《ダビデ》1501-1504
ミケランジェロ《ダビデ》1501-1504

概要


作者 ミケランジェロ
制作年 1498-1499 
メディウム 大理石
サイズ 174 cm × 195 cm
所蔵場所 サン・ピエトロ大聖堂(ヴァチカン)

『ピエタ』像は、バチカン市国のサン・ピエトロ大聖堂に収蔵されているミケランジェロによる彫刻作品。ミケランジェロの署名入りの唯一の作品である。

 

この作品は、複数あるミケランジェロによる同主題「ピエタ」シリーズの最初の作品で、磔刑の後、母マリアの膝の上で抱かれたイエスの遺体を描いた有名な作品である。

 

『ピエタ』はローマに駐在していたフランスの枢機卿ジャン・デ・ビルヘールからの依頼で制作された。

 

カッラーラ産の大理石で作られたこの彫刻は、枢機卿の葬儀の記念碑のために作られたが、18世紀に現在の場所、バジリカの入り口北側の第一礼拝堂に移された。

 

ミケランジェロによるピエタ像の作風は、これまでのイタリアの彫刻でにはないもので、ルネサンスの理想とする古典美と自然主義のバランスをとった重要な作品として美術史として評価されている。

 

2019年には、最終的な彫刻モデルとされるテラコッタの小さな像がパリで展示された。

 

解釈


構図はピラミッド型になっている。頂点はマリアの頭で、下方向のマリアのドレス布に徐々に広がり、基部であるゴルゴタの岩にまで到達する。

 

身体の大きな成人男性が女性の膝の上で抱かれている姿を描くのは困難なため、本来はかなりの不自然になるが、マリアの身体の大部分を巨大なドレスで隠すことによって、不自然さがあらわれないようになっている。

 

ミケランジェロのピエタは、50歳前後の年老いた母マリアではなく、若くて美しいマリアを彫ったという点でもこれまでの他の芸術家の作品とは大きく異なっている。

 

磔刑の痕は、非常に小さな爪痕とイエスの脇腹の傷に限られている。

 

キリストの顔には受難を受けた表情が見られない。ミケランジェロは「ピエタ」を死を表すものにしたかったのではなく、むしろ「宗教的な放棄のビジョンとイエスの穏やかな顔」を表現したかったという。つまり、キリストを通じた聖化により、人と神との交わりが表現している。

 

ミケランジェロがピエタの制作に着手したとき、彼は「心のイメージ」を表現した作品を作りたいと考えていた。

若いマリア像


マリアは約33歳の息子の母親にしては非常に若く彫られている。このことについては、さまざまな説明が提案されている。

 

一つは、彼女の若さは彼女の不滅の純潔を象徴しており、伝記作家であり彫刻家仲間でもあるアスカニオ・コンディヴィは次のように語っている。

 

「あなたは、貞淑な女性は、貞淑でない女性よりもずっと若いことを知らないのか?彼女の体を変えてしまうような淫らな欲望を一度も経験したことのない聖母の場合はなおさらである」

 

ほかの説として、ミケランジェロはダンテの『神曲』に大変な影響受けていたため、永遠の淑女「ベアトリーチェ」を一部モチーフにしている可能性もある。

 

また、『天獄篇』(詩編第33番カンティカ)で、聖ベルナールは聖母マリアへの祈りの中で、「Vergine madre, figlia del tuo figlio」(聖母、あなたの息子の娘)と述べている。これは、キリストが三位一体の人物の一人で、マリアはキリストの娘であり、キリストを産んだ処女母でもあるという意味である。言い換えれば、キリストはマリアの子どもであり、マリアの父でもあるということだ。そうした点でマリアが若く表現されている。


■参考文献

https://en.wikipedia.org/wiki/Piet%C3%A0_(Michelangelo)、2020年7月8日アクセス